「持分割合の範囲」で所有権が存在
共有の基本的な意味についておさえたところで、ここからは共有名義不動産のポイントについて詳しく解説していきましょう。
まず、共有名義不動産では、共有者それぞれが持分割合の範囲で所有権を持っているのであり、1つの不動産の「この部分を所有している」というものではありません。つまり、「甲土地について3分の1の持分がある」といった場合、甲土地の3分の1にあたる特定の部分を物理的に所有しているという意味ではないのです。
たとえば、甲土地があり、長男、次男、三男の名義で共有している場合、そのうちXの部分は長男、Yの部分は次男、Zの部分は三男というように土地がそのまま3等分されるわけではありません。したがって、長男も次男も三男も甲土地の全体について使用することができるのです。
この点に関して、民法249条では、「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる」と規定しています。これは、共有者が自己の持分に応じてそれぞれ、所有権の機能である「使用・収益・処分」の権能を有していることを意味します。
共有者は「保存・管理・変更」が可能
具体的には、それぞれの共有者は共有名義不動産に関して、①保存行為、②管理行為、③変更行為を行うことが認められています。
①保存行為とは、共有物の現状を維持する行為です。また、②管理行為とは、目的物を利用・改良する行為です。さらに、③変更行為とは、共有物の性質もしくは形状またはその両者を変更することです。
①は共有者が1人だけで行うことができます。それに対して、②については持分価格ベースで過半数の同意がなければ行えません。また、③については全員の同意が必要となります。
①から③それぞれの行為の具体例としては、以下のようなものがあげられます。
①保存行為
●目的物の修繕(雨漏りの修繕など)
●共有している不動産の侵害に対する妨害排除請求
●不法占拠者に対する返還請求
②管理行為
●賃貸借契約の締結・解除(建物3年、土地5年以内)
●共有地の地ならし
●部分的なリフォーム
③変更行為
●山林の伐採
●田を畑にする行為
●大規模なリフォーム
●共有している土地に建物を建てること
●共有している建物・土地の売却