共有持分の売買・相続により、権利者数が2ケタに!?
本連載では、共有名義不動産をめぐってトラブルが起こったときの解決方法について紹介しました。それらの方法を利用することで共有状態をスムーズに解消することが可能となり、確実にトラブルから逃れることができるようになるはずです。
ここからは、そこからさらに一歩進んで、そもそもトラブルを起こさないためにはどうしたらよいのか、すなわち共有名義不動産のトラブルを事前に回避するための方法について詳しくみていきましょう。
まず改めて強調しておきたいのは、「不動産が共有状態にある限りは、そのためにいつトラブルが起こってもおかしくない」ということです。たとえば、次のXさんのようなケースではそうなるリスクがとりわけ大きいといえるでしょう。
「10年前に相続した一軒家の共有持分を持っています。他の共有持分について売買、相続が行われた結果、今では共有者が15人もいます。親族以外の第三者も共有持分権者となっているため、権利関係はとても複雑になってしまいました。しかも、共有者の1人だった叔母が最近亡くなったため、その相続により権利関係がさらに複雑になるのが避けられない状況です。今後、時間が経てば経つほど、共有者は増え、ますます複雑な状況になる可能性が高いので、今のうちに自分の持分だけでも処分したいと思っています」
このケースは、Xさんからの相談を受けて私が実際に取り扱ったものです。現時点では、共有状態にある一軒家についてトラブルは起こっていません。にもかかわらず、Xさんが持分の処分を決意したのは、トラブルがいずれ確実に起こると予想されること、そしてもしそのときに子どもたちが自分の持分を相続していたら、そのトラブルに巻き込まれる危険性が高いと考えたからでした。
このケースのように、時間が経つにつれて共有者の数が増えていき、その結果、権利関係が複雑になっていくことは共有名義不動産では非常によくあることです。そして、権利関係が複雑になればなるほど、いざトラブルが起こったときに、その解決は難しくなります。
相続時の「とりあえず共有」を避けることが重要
このケースも含め、共有名義不動産をめぐってトラブルや問題が起こる場合、相続した不動産を共有状態のままにしていることが原因となっている例が少なくありません。
先に述べたように、相続人が複数人いる場合、相続対象となる不動産はまずその全員で共有されることになります。そして、その後、遺産分割を経て相続人の誰か1人の単独所有になったときにはじめて共有ではなくなるわけです。
逆にいえば、遺産分割によって誰か1人の単独所有にならない限りは、そのまま共有状態が続くことになります。たとえば、親の不動産を子どもたちで相続したような場合には、兄弟のうち誰のものにするのか、それとも売ってしまうのかといったやりとりが行われた末に、結局話し合いがまとまらず、「とりあえずこのまま共有にしておこう」という流れになることが少なくありません。そして、後日トラブルが発生し「あのとき共有にしなければ、こんなことにならなかったのに・・・」と後悔する羽目になるのです。
このような事態を防ぐためには、すなわちトラブルの火種を作らないようにするためには、相続時の「とりあえず共有にする」を避けることが重要になるのです。