持分比率が過半数あれば、独断で管理が可能だが・・・
前回でみたように、管理行為については「持分をどれだけ持っているのか」が重要です。というのは、共有者の1人が持分比率の過半数を持っているのであれば、その共有者の判断と意思だけで管理行為を実行することが可能となるからです。
たとえば、共有名義となっている建物の持分比率の過半数を持っている者は、建物の部分的なリフォームを行うのに他の共有者の同意を求める必要はありません。
逆にいえば、持分比率の過半数を持たない場合は、他の共有者の同意が必要になるわけです。にもかかわらず、共有者の1人が他の共有者の承諾を得ることなく勝手に管理行為を行って、トラブルになる例が多々みられます。たとえば次のようなケースです。
勝手な管理行為は「不法行為」に該当するため注意
「1年前に亡母から姉弟4人(各持分4分の1ずつ)が相続した3階建てアパートがあります。このアパートには共有者は誰も住んでいませんが、12部屋は貸していて家賃収入があり、4人の均等割で賃料収益金を分配しています。しばらくして姉が突然、長期間空き家状態だった1階の1部屋を使って『喫茶店をやる』と言い出し、私たちが承諾する前に勝手に工事を始め改装してしまいました。そして姉は『私は持分を持っているのだから家賃は払わない』と言い張っています。姉の言い分を受け入れるしかないのでしょうか?」
このケースでは「喫茶店をするためにリフォームするのであしからず」という書面が姉の代理人弁護士から相談者宛てに届いたので、相談者本人も仕方がないとあきらめかけていました。
結論から言うと、他の兄弟の同意を得ずに、姉が改装工事を行ったことは不法行為に該当します。
1階の1部屋を喫茶店に変えることは、部分的なリフォームにあたり管理行為に該当します。そのため、持分価格ベースで共有者の過半数の同意が必要となるからです。
相談があった時点で、すでに工事は完了しており喫茶店もオープンしていました。したがって、相談者は姉に対して、改装工事前の状態への復旧を要請したり損害賠償を請求したりすることもできました。しかし、相談者は姉との関係を悪化させたくないと考えて、持分比率による賃料を請求するだけにとどめました。その後、相談者には姉から賃料が支払われることになり、トラブルは無事解決の運びとなりました。