今回は、株式投資の「投資尺度」にはどんな種類があるのかを見ていきます。※本連載では、松本大学松商短期大学部経営情報学科の藤波大三郎教授による著書『たのしく学べるファイナンシャル・プランニング』(創成社)の中から一部を抜粋し、ファイナンシャル・プランニングの基礎知識の中から「金融資産運用」について解説します。

最も有名な指標は「株価収益率(PER)」

(4)株式の投資指標

 

株式投資を行う場合の投資尺度については、企業の業績から説明のできる株価であるかということが重要となります。1990年のバブル崩壊を経験したわが国では、こうした観点がようやく浸透したといえるでしょう。米国でもITバブルが崩壊してからはこうした見方が強くなっているようです。

 

その1つに配当利回りがあります。1株当たりの配当金が何%になるかというものです。高い方が良いのですが、利益の動向も同時に見る必要があり、ROEが重要となります。当期純利益のなかからいくら配当に充てたかという配当性向の値と同時に見ることも大切です。

 

最も有名な指標として株価収益率、PER(プライス・アーニングス・レシオ)があります。これは株価を1株当たりの当期純利益で割った値であり、株価が1年間の税引後利益の何倍となっているかを表します。この値の逆数は株式益回りと呼ばれて、長期金利、すなわち10年国債の利回りと比較されます。

 

この株価収益率が20倍を超えるとバブルではないかと警戒されるようになります。これには次に述べる長期間で見る考え方もあるのですが、一般的には利益の20倍が1つの目安であるといって良いでしょう。しかし、個別の株式のすべてがこれで判断できるものではなく、その企業の業界平均と比較することも大切です。

 

1980年代のバブルの時代に、株価収益率は60倍を超えましたが、日本人は専門家から一般人までバブルとは思っていませんでしたが、現在では株価収益率の知識は広く行き渡っています。

 

この株価収益率には、ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー氏の「シラーPER」というものがあります。これは現在の株価を過去10年間の利益(インフレ調整後)の平均値で割って求められるもので、25倍を超えると株価はバブルとされるもので有力な見方といわれています。

1株当たりの純資産額を比較する株価純資産倍率、PBR

また、株価純資産倍率、PBR(プライス・ブックバリュー・レシオ)という指標も重要でしょう。これは株価と1株当たりの純資産額を比較するものです。資産は簿価で計算されますので、含み益は反映されていないところに注意が必要です。

 

そして、前に述べたROE、自己資本利益率が企業の収益性の指標として重要となります。現在は政府も企業は8%以上のROEを目指すべきとしています。PBR、PER、ROEには、

 

PBR=PER×ROE

 

の関係があり、PBRが割安でもROEが低ければ投資対象としての魅力は小さくなります。ただし、ROEの値だけでなく、その企業の事業や財務状況がどの程度のリスクがあるかも合せて見る必要があります。借入を増やせば、ROEを上げることが可能ですが、その分、倒産リスクは高まりますので、PERは低下します。

たのしく学べる ファイナンシャル・プランニング

たのしく学べる ファイナンシャル・プランニング

藤波 大三郎

創成社

要所を押さえることで,効率よくFPの知識を得ることができる! 目次 第1章 ライフプランニングと資金計画 第2章 リスク管理 第3章 金融資産運用 第4章 タックスプランニング 第5章 不動産 第6章 相続・事業承継

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