今回は、「株式投資」「投資信託」にはどんな税金がかかるのかを見ていきます。※本連載では、松本大学松商短期大学部経営情報学科の藤波大三郎教授による著書『たのしく学べるファイナンシャル・プランニング』(創成社)の中から一部を抜粋し、ファイナンシャル・プランニングの基礎知識の中から「金融資産運用」について解説します。

年間120万円の非課税投資額となった「NISA制度」

(3)株式投資にかかる税金

 

株式投資にかかる税金では、後で述べる配当控除という税の軽減措置を受けるためには総合課税としておく必要があるという点です。特定口座の源泉徴収で課税が終了する申告不要や申告分離課税を選択していては、配当控除は受けられません。

 

上場株式などの譲渡益は、20.315%の課税とされますが、平成15年から平成25年までは所得税7%、住民税3%、合計10%と利子所得より軽減されていました。政府としては「貯蓄から投資へ」の標語を掲げていますので、それを税制面でバックアップしていたわけです。その廃止に代えて次に述べるニーサ(NISA)、少額投資非課税制度が平成26年から導入されていますので、政府のバックアップは変わらないということになっています。

 

また、上場株式の取引で他の株式などとの譲渡益と通算しきれないで譲渡損失が生じた場合は、翌年以降3年間の繰越控除が可能となっています。

 

NISA(少額投資非課税制度)の制度は英国のISA(インデビデュアル・セイビング・アカウント:個人貯蓄口座)の制度を真似て導入されたもので、日本版ということで頭にNをつけてニーサと呼ばれています。当初は年間100万円が非課税でしたが、平成28年から年間120万円の非課税投資額となりました。これは、毎月、10万円の積立投資が可能ということです。ちなみに、勤労者世帯の月額の平均金融資産純増額はどの年齢でも10万円未満ですので、妥当な金額と思われます。

 

この制度では、譲渡損失があってもなかったものと見なされることになっており、短期での売買による売却損を出すと損をすることになっています。つまり、長期投資を前提とした制度となっています。

 

なお、平成30年からは「積立NISA」と呼ばれ、年間投資上限額は40万円ですが、非課税期間が20年となる税制が始まります。これにより、分散投資、長期投資、積立投資が奨励されることになります。

 

大手銀行のNISAの利用者としては70歳代の女性が最多であり、地方銀行・第2地方銀行では60歳代の女性が最多となっているといわれています。平成28年3月末時点では、年代別口座開設者比率は、60歳代が約26%、70歳代が約19%、50歳代が約17%でここまでで全体の約62%を占めており、高齢者がNISAの主な利用者となっていることは明らかです。

 

また、平成26年の年間ベースでは、高利回りの外国債券に投資する投資信託、あるいは海外REITに投資する投資信託がよく購入されており、NISAの制度趣旨を生かした商品選定になっているとはいいがたい傾向がみられます。

 

そして、平成28年4月からはジュニアNISAも始まりました。実際にお金を出すのは親であり、その贈与税の年間非課税額110万円より小さな額である年間80万円となっています。学資保険、こども保険の加入者が年間約60万件といわれており、年間の子どもの出生数が約100万人とすれば約6割の親が子どものために備えているといえますが、その資金準備を株式、株式投資信託によって行ってもらおうということともいえそうです。

投資信託における元本払戻金は「非課税」

(4)投資信託にかかる税金

 

投資信託の分配金は普通分配金と元本払戻金(特別分配金)に分かれます。普通分配金はいわゆる値上がり益部分からの分配金であり、元本払戻金(特別分配金)は、元本部分からの分配金です。このため、元本払戻金(特別分配金)は、前に述べた通り、非課税となっています。

 

従来は、特別分配金とだけ表記されていて、その内容が元本の払戻であることに気がつかない人々が多くいたといわれます。毎月分配型の投資信託が多く売れている状況では大きな問題でした。この分配金と投資元本の双方を把握する必要があるということで、平成26年12月からトータルリターン通知という制度が導入されています。トータルリターン通知がない頃は、FPはトータルリターンの考えを説明するだけでも顧客からありがたがられたといわれています。

 

なお、ETFには配当や利息などから得られる期間収益を超える分配金の支払いは認められていないので、当然ですが、元本払戻金(特別分配金)はありません。

たのしく学べる ファイナンシャル・プランニング

たのしく学べる ファイナンシャル・プランニング

藤波 大三郎

創成社

要所を押さえることで,効率よくFPの知識を得ることができる! 目次 第1章 ライフプランニングと資金計画 第2章 リスク管理 第3章 金融資産運用 第4章 タックスプランニング 第5章 不動産 第6章 相続・事業承継

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