元本1千万円とその利息が保護される「預金保険制度」
8.セーフティーネット・関連法規
(1)金融商品などのセーフティーネット
預金保険制度は1971年から始まりました。それまでは銀行が破綻することはないとされていましたが、金融の自由化に向けて銀行の破綻もあるとの前提に立ち、この制度が始まりました。
基本は預金者1人について元本1,000万円とその利息が保護されます。試験の点からは、1,000万円には利息を含まない点が出題されるようです。しかし、これには大きな例外があり、当座預金、そして、決済用預金として無利息、要求払い、決済サービスの提供の3条件を満たす預金は全額保護となっています。しかし、こうした例外があると銀行も顧客も取引に緊張感がなくなり、銀行は危険な経営をし、顧客も銀行の選別をしなくなるといわれます。
セーフティーネットは、サーカスの空中ブランコの下に設置してある安全ネットのこととよくいわれます。セーフティーネットが大きいと空中ブランコの演技者は危険な演技をできますが、小さいと慎重な演技になります。銀行の経営の行動も同じだというわけです。
ただし、前に述べたように外貨預金は対象外です。これは外貨預金が国民の一般的な貯蓄の手段とは考えられないとされたからです。
金融商品のセーフティーネットには、証券会社に預けている株式などについての投資者保護基金があります。これは顧客1人当たり1,000万円まで保護されます。証券会社が顧客から預かっている資産は証券会社自身の資産とは別に管理をする「分別管理」が行われており、証券会社が破綻しても顧客の資産に影響がありません。しかし、証券会社の破綻など、万が一の事故により支払いに支障が出た場合を想定して作られました。
「顧客の実情に適した投資勧誘をする」ことが重要
(2)関連法規
金融商品取引法ではさまざまなルールが定められていますが、なかでも重要なルールが、適合性の原則と呼ばれるものです。米国のスータビリティー・ルール(suitabilityrule)を日本に導入したものであり、顧客の知識、経験、財産、目的の4つの点からみて顧客の実情に適した投資勧誘をしなくてはならないというルールです。証券投資は自己責任の世界ですから、そうした責任を問えないような投資家への投資の勧誘を禁止しておこうというものです。
ところが実際の適合性の判断は難しいので、裁判となっても適合性原則違反ではなく、説明義務違反で処理することが多かったのですが、近年では正面から適合性原則違反を判決理由とする裁判例もあります。
金融商品販売法は、前に述べたように金融サービスの消費者保護のために作られた法律ですが、基本は説明義務の履行を販売業者に求めるものです。そして、損害額も元本割れの額を損害額とすることになりました。この法律は民法の不法行為という分野の特別法にあたります。通常は、原因の行為と損害の間に因果関係の証明がないとだめなのですが、この法律では説明がなかったことを証明するだけで購入者が救済されることになっています。
消費者契約法では、販売業者が断定的な判断を提供し、消費者が、それが確実なことと誤認して契約した場合に、契約を取り消すことができることになっています。これは民法の意思表示という分野の特別法になっており、消費者が救済されやすくなっています。