外貨で為替差益を狙う「TTS」「TTB」
6.外貨建て商品
(1)TTSとTTB
TTSとTTBという為替レートは、銀行が外貨を売る場合、つまりセルと、買う場合、つまりバイからきています。TTはテレグラフィック・トランスファーの意味ですが、要するに外国に電信送金をする時に使用する為替相場という意味です。
TTSとTTBの差は米ドルの場合、その中間の「仲値」を中心に上下1円が基本ですが、銀行によって違いますし、実際の取引では大口取引を中心に大幅に銀行が顧客に対して値引きしています。また、外国為替証拠金取引では、上下5銭などといった小さい幅になっています。
外貨商品は購入した時より円高になれば為替差損が生じるというデメリットがあります。逆に円安になれば為替差益が生じるというメリットもあります。一般に為替相場の変動で収益を得ることは困難であり短期の外貨投資は投機に近いといえるでしょう。
また、長期的には前に述べた購買力平価と呼ばれる考え方があり、外貨投資により一方的に為替差益で収益を得ることはないとされます。ですから、一般市民は、為替相場の変動リスクは分散投資の目的で仕方なく海外の債券、株式に投資をする場合以外は取るべきではないといわれています。
なお、明治4年(1871年)に1米ドル=1円で円ドル相場がスタートしましたが、現代の変動相場制の下では、2011年10月に記録した1米ドル=75円32銭が円高の最高値となっています。
預金保険制度の対象外に置かれる「外貨預金」
(2)外貨預金
外貨預金については、この商品は預金保険の対象ではないということがポイントでしょう。預金保険制度については後で述べますが、銀行が破綻しても1,000万円までの元本とその利息は保護される制度ですが、外貨預金は譲渡性預金などとともにその対象外とされています。
外貨預金には為替予約という解約の時に使用する為替レートを預金開始時に銀行と締結する制度があります。これを用いると将来の為替相場の変動のリスクはなくなります。一方、円高の予約レートが設定されますので外貨預金に一般的な高金利のメリットなくなります。ですから、一般的には外貨預金で為替予約をする意味はありません。
為替予約をしない場合は為替差損、為替差益が出る可能性があります。為替差益が出た場合は所得税の雑所得となります。そして、後で述べますが、一般の会社員の場合、給与以外の所得が20万円を超えると確定申告をする必要があり、雑所得もそれに含まれます。
したがって、外貨預金を行う場合は、こうした点について十分管理する必要があります。しかし、これは一般の方には難しいように思います。特に、元利自動継続で何年も外貨定期預金を行うと、こうした計算は複雑なものとなることに注意が必要であり、積立の場合はさらに複雑になります。
外貨預金の為替リスクは積極的に引き受けるものではないと思います。しかし、外貨預金は後で述べる相関係数で見ると日本株との相関性が小さく、分散投資を行うと投資資産全体としてリスクが小さくなりますので、分散投資の一部として用いることが適切でしょう。
外貨建の投資信託「外貨建MMF」
(3)外貨建MMF
外貨建てのマネー・マーケット・ファンドは、外貨建ての短期証券で運用する債券ファンドであり、株式は一切組み入れることはできません。購入手数料もかからず、外国証券取引口座の口座管理料もかかりません。
なお、解約の時に円安であると為替差益が出ます。それは平成27年まで非課税でしたが、平成28年からは税制改正に伴い分配金、売買益ともに20.315%の申告分離課税となりました。