デリバティブ取引の一種「オプション取引」
7.金融派生商品・ポートフォリオ運用
(1)オプション取引
オプション取引は、買う権利や売る権利を売買する取引であり、デリバティブ取引(派生商品取引)の1つです。一般の方が疑問に思うのは、こうした権利の取引といわれても、その価格がどうなるかということでしょう。これは簡単にいえば確率の考え方を用いて計算します。
たとえば、輸出業者がドル建ての輸出売り上げが円高で目減りするのを防ぐためには、ドルのプット・オプションを買っておけば良いといえます。大まかにいえば、1ドル=100円の時に締結した輸出契約ならば、1ドル=100円のプット・オプションを買えば、円高になれば、プット・オプションを行使して売り上げの円ベースでの価格を守り、円安になればプット・オプションは放棄して円安メリットを得ればよいわけです。
米ドルと円の相場の変化の確率は概ね過去のデータからわかっており、標準偏差で10%位です。標準偏差とは高校1年生の数学で習った人もいると思いますが、物事のブレ具合を示す指標であり、標準偏差が10%といえば、プラス・マイナス10%の幅に確率で約68%が収まるブレ幅です。こうしたデータを基にオプションの価格であるオプション・プレミアムが計算されます。
価格変動性のリスク判断に用いる指数「相関係数」
(2)相関係数
相関係数は分散投資を行う時の重要な考え方であり、たとえば、ある資産とある資産の値動きがどの程度同じかを示す指標です。その計算の仕方は、標準偏差の計算の時に使用した平均値からの離れ具合である偏差という数値を使用します。
2つの資産がまったく反対の値動きをすればマイナス1となり、全く同じであればプラス1となります。実際の資産運用では、ポートフォリオ運用を行う時の資産配分の計算に使われます。
たとえば、年金の資産運用は、運用資産を、国内株式、外国株式、国内債券、外国債券と4つに分類して運用するのが一般的ですが、それらの資産の配分を計算する時にこの相関係数を用います。
理論的には、相関係数が1以外の資産に分散投資をすればするほど投資資産全体のリスクは低減します。そして、実際の株式や債券で相関係数が1となるような資産はありませんので、広く分散投資をする方がリスクは小さくなるわけです。公的年金の運用には国内株式、国内債券の他に外国株式、外国債券への投資を広く行っていますが、そうした分散投資はリスク、つまり運用資産の価格変動性を低減します。
たとえば図表のように、国内株式と相関係数が小さい外国債券との分散投資を行うと、価格の変動性は低減します。
[図表]国内株式と外国債券への分散投資の効果
なお、2008年のリーマン・ショックの時には、国際分散投資によるポートフォリオ運用を行ったバランスファンドと呼ばれる投資信託も値下がりしてしまい、国際分散投資の手法は評判を下げました。その後は価格が回復しましたが、「分散投資をすれば各資産の価格変動の違いにより全体としては安定した変化となる」という点については疑問が出ました。そこで、標準偏差を目安にしたリスク・コントロール型と呼ばれるバランスファンドも発売されています。