会社の危機的状況が、地域の人達にまで知れ渡る
東芝と銀行団の交渉を見ていると、
交渉というよりはむしろ、
東芝は銀行管理の下に陥っている、といった様子です。
では、会社が銀行管理になると、
どのようなことが起こるのでしょうか?
その地獄を見た経営者の実話をもとに、書かせていただきます。
経営支援アドバイザーなる人物が会社に出入りし、
頭を抱える様子の経営者の姿を、
従業員は目の当たりにしてゆきます。
そして当然、銀行関係者には、
経営状態を完全に把握されています。
加えて経営者は、アドバイザーの指示に従い、
高額家賃の社宅住まいから、
家賃の安い、狭いマンションへと引っ越しました。
となると、その会社が経営危機に陥っていることは、
どこからか、地域の人達にも、知れ渡ることとなってゆきます。
事務所にいると、
会社の前を通る人の、ひそひそ声が、聞こえてきたそうです。
“この会社、今、大変らしいよ。”
“〇〇も、もう終わりだな。”など。
それがだんだん、現実か被害妄想かさえ、
わからなくなっていった、とのことです。
その経営者の場合、会社の風評を感じるにつれ、
地域での買い物や、レストランに家族で行くことさえ、
億劫になってしまったのです。
こうなるともはや、うつ状態です。
数万の給与を渡していた親族も泣きついてきて…
さらには、親戚がもめ始めます。
その会社には、仕事に全く関わっていないのに、
数万円の給与を受けている親戚が、数名いました。
そのような支出は当然、アドバイザーの指示により、
真っ先にカットされてゆきます。
その人たちは、泣きついてきました。
“そんな!この給料がなかったら、私はどうやって生活するのよ!”
すると、会社の仕事に関わっている親戚は、
これまでのモヤモヤを吹き飛ばすかのごとく、反論します。
“そんなこと言っても、自分は何もしていないじゃないか!”
これまで通りの親戚づきあいは、完全に崩壊していったのです。
何の仕事もしていないのに、給与を払っている親族がいる、
という会社は、今も見受けます。
それはやはり、あるまじき同族臭経営の、元になる行為なのです。
とにかく、銀行管理下に陥るという事は、
会社経営だけでなく、経営者の日常生活をも、
破たんに落とし入れることになってしまう、ということなのです。
そしてさらに、親戚以上に、
経営者へ容赦なき罵声を浴びせるグループがありました。
支払いを待つ、債権者の人たちです。
(続)