「今後は、我々の指示に従ってください」
東芝と銀行団の交渉を見ていると、
交渉というよりはむしろ、
東芝は銀行管理の下に陥っている、といった様子です。
では、会社が銀行管理になると、
どのようなことが起こるのでしょうか?
その地獄を見た経営者の実話をもとに、書かせていただきます。
その会社は、借入金ありきの事業構造でした。
しかし、経営環境が変わり、売上高が激減しました。
借入金依存型の財務体質の場合、
売上激減は資金繰りを一気に圧迫します。
返済資金が途端に不足するからです。
そして、
メイン銀行であった、地域の信用金庫が動き出しました。
財務診断報告書を作成して持参し、
“経営支援アドバイザーが、今後のお手伝いをします。”
となったのです。
そもそも、メイン銀行が、頼みもしないのに、
財務診断報告書を作成してくる、というのは、
回収に危険を感じて動き始めた、ということなのです。
経営支援アドバイザーなる人物が、やってきました。
中小企業支援協議会に所属する方ですが、要は、銀行OBです。
儀礼的な挨拶もそこそこに、洗礼の言葉を、
アドバイザーは経営者に浴びせました。
“現状からみて、
皆さんに経営のすべてをお任せすることはできません。
今後は、我々の指示に従ってください。”
そのときはじめて、
銀行管理の下に陥ったことを、経営者は実感したのでした。
アドバイザーの指示に、経営者は精神的ダメージを…
アドバイザーは、とにかく事務的に、淡々と質問し、
資料の提出を要求してきました。
経営者としては、窮地の状態なので、
情的に心境を吐露するものの、
何の反応もなく、一切排除、の姿勢だったそうです。
まず求められたことは、大きく3点でした。
①会員権、株、土地など、換金できるものはすべて売る。
②売上見込みの根拠を徹底して追及する。
➂コストの詳細を調査し、ことごとくカットする。
それぞれに、いつから、いつまで、という、
期日を明確にされてゆくのです。
借入金の返済原資となる資金繰りを確保し、
リスケジュールで月額の返済額を組みなおしてゆきます。
当然、すべての借入先に対して、です。
アドバイザーを送り込んだメイン銀行が中心となり、
その条件に合わせる形で、他行のリスケジュールも進めてゆきます。
状況は、すべての銀行に対して、丸裸になります。
アドバイザーはすべてを事務的に執り行い、
厳しく追及し、指示してゆきます。
そんな日々が続いてゆきます。
その状況に向き合うほど、経営者は精神的ダメージを受け、
後ろめたくなり、自分は社会的不適格者ではないか、
という、自己嫌悪に落ち込んでいったそうです。
そうしなければ、この難局を超えれない。
そうとわかっていても、耐え難い日々が続いたのです。
しかし、そのダメージは、それだけではなかったのです。
(続)