今回は、銀行が財務局に提出する「クレーム対応報告書」について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

財務局から要求された「クレーム対応報告書」の提出

前回の続きです。

 

金融庁は銀行に対し、
“保証に頼る融資から脱却せよ!”
と、大きく声を上げています。
が、銀行と中小企業の交渉の現場では、
いまだそんなことはおかまいなしの、
仁義なき銀行交渉が、繰り広げられているのです。

 

担保・個人保証を、
何としてもはずそうとしなかった銀行支店長が、
「個人保証・担保はいただきません」
という提案書をもって会社にきました。
提案書を見た経営者は、わが目を疑ったそうです。
金利条件も、要望通り、
タイボ+スプレッドの形になっていました。
確かに、財務局へ連絡した後、支店長の態度は変わり、
個人保証は外します、となったものの、
“担保だけはいただきます。”と、
まだ強気の部分が残っていた支店長です。
それも、前日の話しです。
その支店長が話し始めました。

 

“あのぉ、実はですね…。
 今回の件で、
財務局へ対応報告書を急ぎで出すことになっていまして…。
 財務局にお話しされた内容やそのときの様子を、
 もう少し詳しく教えていただけませんでしょうか?”
と、こわいくらい柔らかな物腰で、言ってきたのです。
支店長の話しによると、前日の交渉のあと、
財務局から、銀行本店を通じて、
個人保証・担保に対するクレーム対応報告書の提出を、
要求されたようなのです。
もちろん、本店を通じて、財務局へ提出します。

 

しかし、
支店長は財務局と直接やりとりしたわけではありません。
経営者と財務局の間で、
いったいどのようなやりとりがあったのか、
気になってしかたがないのです。

 

しかも、財務局の電話を受けているのは、銀行本店です。
本店で対応した人物に詳しくなど、
支店長レベルの立場では、恐れ多くて聞けるはずもありません。
状況をうかがえるのは、目の前の経営者のみ、なのです。
支店長の頭の中には、そのときすでに、
自らの人事のことがちらついていたはずです。
銀行でのマイナス評価は、一生ついてまわるのです。
低姿勢になるのも、むりがないのです。

勉強不足な銀行員ほど「不遜な態度」を示す!?

“間違ったことを書くわけにはいきませんので…。”
とかなんとか苦し紛れに、支店長は言葉を繋げました。
経営者は、根掘り葉掘りと質問を受けたそうです。

 

そもそも、
“どうぞ財務局へ連絡してください。”
と啖呵を切ったのは、その支店長です。
財務局の電話番号を教えてくれたのは、その隣にいる担当者です。
弁解の余地はないのです。

 

実は、
そのいきさつさえも、経営者は財務局へ詳しく話しています。
が、経営者は、その詳細を支店長に話すことはしませんでした。
“何をいまさら、って感じですよ!”
と、経営者は、してやったり、なのです。
ほどなく、
“ついに、個人保証も担保も無しになりました!”
と、すぐに私あてにメールで連絡が来ました。

 

続けてすぐに、その経営者から電話もありました。
“あの支店長はどうなるんでしょうか?”
“まあ、しばらくして、
 「お世話になりました。」と、
 あいさつに来るかもしれませんねぇ。”
“えっ、それって・・・。”
“どこかへ飛ぶでしょうね・・・。
 銀行という組織は、そういうところですよ。”
“そういえば、
その支店長、私との別れ際に、こう言ったんですよ。
 「お願いですから、もうあんまり勉強しないでください。」”
“いやいや、あの支店長があまりにも勉強不足なんですよ!”

 

勉強不足な銀行員ほど、不遜な態度を示します。
銀行を取り巻く環境の変化を、全く理解していないのです。
とはいえ、タフな交渉の末、
この経営者は、ようやく満足ゆく融資条件を獲得しました。
銀行支店長に倍返しできた喜びを語りつつも、
今後のことの相談を受け、電話を終えたのでした。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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