今回は、個人保証を外すための銀行交渉の際に、財務局へ連絡したことで銀行の態度が急変した事例を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

銀行支店長に了解を取って財務局へ連絡した「その後」

前回の続きです。

 

金融庁は銀行に対し、
“保証に頼る融資から脱却せよ!”
と、大きく声を上げています。
が、銀行と中小企業の交渉の現場では、
いまだそんなことはおかまいなしの、
仁義なき銀行交渉が、繰り広げられているのです。

 

新規融資をする際、個人保証と担保は外さない、
と、言い張る銀行支店長に対し、了解を得たうえで、
経営者は財務局へ連絡しました。
財務局からは、その内容を銀行へのクレームとして取り扱い、
1週間以内に銀行へ連絡します、といわれました。
で、その翌日、さっそくに、
銀行支店長から経営者に電話がありました。

 

“あのぉ、財務局のほうは、いかがでしたでしょうか?”
明らかに、これまでとは違う、丁寧すぎる態度に、
経営者は驚きました。
その前日、“どうぞ財務局に連絡してください!”
と言っていた人物とは、まるで別人の雰囲気なのです。
あの強気の姿勢はなんだったんだ、という様子だったそうです。
おそらく、取り急ぎの連絡が、財務局から銀行本部へ入り、
支店へ伝わったのではないか、と思われます。

提案書には「個人保証・担保はいただきません」の文字

“ええ、財務局の方に問い合わせの内容をお伝えしました。
 1週間以内に銀行に連絡します、って言ってましたよ。”
“そうなんですか!
 あのぉ、今回の融資に関しては、個人保証はいただきませんので、
 何卒よろしくお願いいたします。”
“えっ、そうですか!
 ありがとうございます!担保もなしですか?”
“いやいや、担保だけはお願いしたいんです。”
“そうなんですか…。”
と、その時点では、まだ、担保を要求してきたのです。
その状況を、さっそくに、私あてに連絡してきたので、
“返事はせずに、2~3日様子を見ましょう。
 財務局から、どの程度銀行に伝わっているか、わからないので。”
とし、返事はしばし、先延ばししました。

 

すると、さらに翌日、銀行支店長から連絡がありました。
“提案書をお持ちさせていただきますので、
 お時間いただけますでしょうか?”
“そうですか。今日の午後でもいいですよ。”
となり、支店長と担当者が、提案書をもって会社に来ました。
経営者は驚きました。
その提案書には、
「個人保証・担保はいただきません」
となっていたのです。

 

昨日の時点では“担保はいただきます。”って言っていたのに、
“いったい何があったんだ?”と、
経営者は腹の底で考えました。
しかし、考える間もなく、支店長が
“いや、実はですねぇ・・・。”
と、話し始めたのです。
 

(続)

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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