今回は、多くの銀行が「個人保証に頼る融資」を続ける背景について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

金融庁は「保証に頼らない融資」を要請しているが・・・

金融庁は銀行に対し、
“保証に頼る融資から脱却せよ!”
と、大きく声を上げています。
が、銀行と中小企業の交渉の現場では、
いまだそんなことはおかまいなしの、
仁義なき銀行交渉が、繰り広げられているのです。

 

ある会社が、銀行からの融資を受けることになりました。
年商数億円の会社で、融資額は数千万円です。
銀行は、その地域では二番手の、地方銀行です。

 

その会社の経営者は、心配していました。
“ウチみたいな年商数億円程度の会社で、
 個人保証なしでなんて、貸してくれますかね?”
“何を言ってるんですか?

 自己資本比率40%で、

 営業利益率も4%を維持し続けているじゃないですか。

 銀行にとったらリスクの低い融資ですよ。

 それに、金融庁は保証に頼らない融資をせよ!

 と、銀行に対して言ってるんですよ。”

“そうですかねぇ。大丈夫ですかねぇ。”
“じゃあ、この資料も見せて、
 個人保証は無しの融資を交渉してください。”
と、個人保証に関する、
金融庁の方針が記載されたパンフレットを渡しました。
“わかりました。交渉してみます。”となりました。

 

数日後、交渉結果の連絡がきました。
“やっぱり個人保証は要ります、って言うんですよ。”
“パンフレットも見せたんですか?”
“もちろん。いただいたパンフレットを見せて、
 「今は個人保証をとるな、
  と金融庁の指導があるんじゃないんですか?」
 と、支店長に言いました。”
“で、支店長は何といわれたんですか?”
“そのパンフレットを手にとって目を通して、
 「そうですねぇ。そのような方針があるようなんですが、
  実際はまだまだ、個人保証無しで融資をできるのは、
  上場企業だけなんですよ。」
 と言われたんです。”
で、そのまま進展なく、その日の交渉は終わったそうです。

「大丈夫です、彼らは貸したいんですよ」

個人保証に頼らない融資の指導を受けていても、
取れるものなら個人保証をとりにかかる、
それが今の多くの銀行です。

 

個人保証を取り付けたからといって、罰則はありません。
しかも、この約20年、“不良債権を出すな!”
という金融庁の指導のもと、
口八丁で個人保証・担保を取り付けてきたのです。
その結果が、人事にも影響していたのです。
そう簡単に、その思考行動は変わらないのです。
自分たちの環境・立場が悪くなっているのに、
そのことに気づいていないのです。

 

個人保証無しで融資できるのは、上場企業だけなんて、
完全なるハッタリです。
その支店長だって、わかってます。
彼らはそれを専門に交渉してきたプロです。
この人物のこの様子なら、こういえば通るんじゃないか、
という腹を持っています。
ハッタリでも、個人保証を取れれば、
彼らにとってはパーフェクトな融資なのです。

 

しかし、こちらもその条件をのむ気はありません。
“じゃあ、「金融庁に言うぞ」のカードを出しましょうか。”
“えっ、そんなこと、言ってしまっていいんですか?
 もう絶対に貸さない、とか、なりませんか?”
“大丈夫です。彼らは貸したいんですよ。”
となり、再度支店長に交渉を投げかけたのです。
 

(続く)

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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