前回は、決算書から産業廃棄物処理会社の倒産を分析しました。今回は、成長企業にもかかわらず倒産した、建設会社の事例を見ていきます。

高齢者向けの賃貸住宅やクリニックビルの建設で急成長

決算書分析の実例② 大幅増収で倒産したコバヤシ・ファシリティーズ

 

2015年3月に、負債総額約29億円で自己破産を申請して倒産したコバヤシ・ファシリティーズは、2000年に横浜市に設立された建設会社です。

 

設立当初は普通の建設会社で、年間売上高も数億円でした。ところが、2005年頃から、土地所有者向けに資産活用策として、高齢者向けの賃貸住宅やクリニックビルの建設を提案するようになります。そして、自社で請け負った案件の一括借り上げなどを手掛けるようになると、時代の波に乗って急成長したと報道されています。

 

子会社として、介護施設の運営受託会社ケア・ファシリティーズを設立するなど、介護、福祉、医療の分野に注力し、高齢化社会に対応しました。

 

2009年に約6億円だった売上高は、2013年には約34億円となり、成長著しい企業として注目されていました。

倒産前は、当期純利益は多くないが3期連続の黒字

倒産前は4期連続の大幅増収を果たし、その好調ぶりが目立っていましたが、2014年8月に工事代金の支払期間の延長を依頼するなど、信用不安が発生し、2014年11月決算では大幅赤字を記録しました。その結果、債務超過となり、2015年3月に破産してしまいました。

 

2014年11月の決算を見れば誰でも一目で危険とわかると思いますので、ここでは、その前期の2013年11月期までの決算書を分析してみることにします。

 

まず、売上高を見ると、2011年が約20億円、2012年が約33億円、2013年が約34億円と、急成長していることがわかります。当期純利益はそれほど多くありませんが、3期連続の黒字でした。

 

[図表]コバヤシ・ファシリティーズの分析結果

出典:著者作成
出典:著者作成
取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意

取引先の倒産を予知する「決算書分析」の極意

田中 威明

幻冬舎メディアコンサルティング

分業化、グローバル化が進んでいる現代にあって、自社のみで事業を営むことはできません。取引先の経営状況を正確に把握することは、これからの時代を勝ち残るために必要不可欠です。 しかし、教科書的な決算書分析の手法で、…

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