今回は、かつて中小企業経営者が銀行の「悪条件融資」を受け入れていた理由を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

地方銀行は「殿様意識」が強い!?

ある会社の借入金明細を見ると、
四つの銀行と取引があるものの、
○○銀行からの借入金が、やたらと多いのです。
しかも、金利が他行よりも高い。
“これ、個人保証はどうなってますか?”
と、経営者にたずねました。
“はずかしい話、全部個人保証させられてます。”

 

“○○銀行は、この地域では、一番の地銀ですよね。
そもそも第一地銀は、殿様意識が強いです。
それにのまれて、先方の条件を受け入れたんじゃないですか?”
と申し上げました。
“いや、もう、おっしゃる通りです・・・。”
どうしてこんなことになったのか、改めてお聞きしました。

 

その会社は、地域で30年以上の業歴があります。
当初はもちろん、商いも小さく、融資をお願いできるのは、
信用金庫や第二、第三地銀、と呼ばれる金融機関だけでした。
“第一地銀の○○銀行なんて、相手にしてくれないと思ってました。
事実、○○銀行からは、誰も営業に来なかったのです。”
とは、その経営者の言葉です。
しかし、業績が伸び、売上規模が伸びると、
○○銀行から社長あてに、電話が入ったそうです。
今から20年くらい前のことです。

 

電話を受けた事務員は、
“社長、○○銀行さん、ウチに来られるんですか!”
“うん!○月○日に来られることになった。
なんと融資の件らしい!”
“えぇ!そうなんですか!あの○○銀行さんが!”
と、電話がかかってきただけで、事務所が盛り上がったそうです。

 

で、当日になり、銀行の要件は、
“当行からぜひ、融資を検討させていただきたい。”
というものでした。
銀行員が事務所を出たあと、社長は、
“あの○○銀行が、ウチに融資をしたいと言ってきました!”
と事務スタッフたちに伝えると、
「やったぁ!」と全員拍手喝さいで喜んだそうです。

銀行に強い姿勢を示せなかった多くの中小企業経営者

“えぇ!うそでしょう!”と言うと、
“いやぁ、○○銀行、というのが、
それだけでステイタスのように感じていたんですよ。
そりゃもう、そのときは、嬉しかったんですよ。”
と、おっしゃるのです。
その喜びようが、言葉にせずとも、銀行員にはわかったのでしょう。
○○銀行に都合の良い条件ばかりを提示してきたのです。
融資してくれるだけで喜んでいる経営者が、
その条件を断るはずもありません。
続け様に融資を受け入れ、○○銀行のシェアが
どんどん高くなっていったのです。

 

かくして、○○銀行からの悪条件融資の残骸を、
今もなお、ひきずっているのです。
“今から思えば、
どうしてあんなことで喜んでいたのか…。”
とは、その経営者のつぶやきです。

 

「銀行」というだけで、
なんだかエライように感じていた時代、
多くの中小企業経営者は、銀行に強い姿勢を示せませんでした。
しかし今、銀行は単なる業種のひとつです。
それも、再編されずに生き残ることさえ、難しい時代です。

 

過去はどうあれ、
「現金」という商品を仕入れる業者のひとつとして、
意識を転換させて、交渉に挑んでほしいのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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