今回は、ある企業の新規事業の頓挫で、融資元の銀行の態度が180度変わった実例を見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

「ぜひとも、当行で全額融資させてください」

"晴れた日に傘を貸し、雨の日に傘をとりあげる。”
銀行とのつきあいが長いほど、切実に感じることと思います。
銀行のその体質は、今も何ら変わっていないのです。

 

ある企業が新規事業を計画し、銀行に融資を依頼しました。
“電話をしたら、支店長と、なんと本店から常務まで来ましたよ。”
と語ったのは、
長年その銀行と取引をしてきた、経営者です。
で、事業計画を説明すると、
“ぜひとも、当行で全額融資させてください。”
と、すぐさま融資の快諾を得たそうです。
ちなみに、その当時、その企業の自己資本比率は、30%台でした。

 

新規融資をもとに土地・建物を取得し、
新規事業を展開する、はずでした。
ところが、建物建設を依頼していた、
地域の建設会社が破たんし、工事が途中でストップしました。
加えて、その事業の見通しの甘さも露見し、
結局、新規事業は頓挫しました。
その場に及んで、それがベストな決断と、判断したのです。

 

残ったのは、
破たんした建設会社に支払った金額の損失と、
新たな借入金の返済、だけです。

「なにさらしとんねん!はよこんかい!」

“今すぐ当行までお越し願えますか?”
やがて銀行支店長から、経営者に連絡が入ったのです。
“いやもう、声のトーンからしてこれまでと別人ですよ!”
とは、経営者の言葉です。
“融資するまでは、低姿勢な「どうぞよろしくお願いします!」
という感じだったのが、そのときの声の雰囲気は、
「なにさらしとんねん!はよこんかい!」
ていう感じですよ!”
そもそも、それまでは、
その銀行の人がうちの事務所に来ることはあっても、
うちが銀行に出向くことは、一度もなかったんですよ。
それがいきなり、すぐ来い!、ですからね。”

 

建設会社への支払損失、新規事業の頓挫、
が銀行の耳に入り、銀行は回収に不安を感じたのでしょう。
“それにしても、あからさまな態度の変わりようでしたよ!”
と、経営者は思い出しただけで、怒り心頭なのです。

 

銀行は、返済能力に疑いがなければニコニコして貸すものの、
ひとたびそこに疑問が生じれば、態度は180度変わるのです。
で、その経営者は銀行へ出向きました。
そこには、雨の日に傘をとりあげる仕打ちが、
待っていたのです・・・。"

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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