一人社長でも企業型確定拠出年金を導入できる
<ケース8> 個人事業主
個人事業主として税理士に決算をお願いしていたりすると、比較的早くから「節税のために」個人型確定拠出年金を勧められたりすることも多いようです。しかし法人成りをして厚生年金の加入者になると、ほとんどの税理士は「会社員の個人型確定拠出年金の掛金が月2万3000円です」と説明します。
これは決して間違ったアドバイスではないのですが、少なくとも経営者としては厚生年金被保険者として個人型確定拠出年金をするも良いし、厚生年金適用事業所として企業型確定拠出年金を導入する選択肢もあるのだということは、ぜひ知っておいてほしいと思います。
実はほとんど知られていませんが、一人社長であったとしても厚生年金に加入していれば企業型を導入することが可能です。
企業型と個人型を比較すると、まず掛金の上限が違います。個人型は月2万3000円ですが、企業型は月5万5000円です。金額が倍以上違いますから資産形成のスピードが違います。
「全額損金」で退職金を作ることが可能に
個人型の掛金拠出は60歳までですが、企業型は契約で65歳まで引き上げることができます。その分税制メリットを長く享受できますから、やはり企業型は魅力があります。
特に個人型は掛金が全額所得控除ですが、その掛金を給与として出す場合、2万3000円の役員報酬アップはすなわちそれにかかる15%の社会保険料のアップにつながります。一方で、企業型は会社の損金として掛金を計上でき、掛金は社会保険料の算定対象になりません。いわゆる全額損金で退職金が作れる。それが企業型確定拠出年金です。
企業型はある程度の事業規模がないと導入できないと思われている場合が多いのですが、実際一人社長であっても、企業型の導入を受けてくれる運営管理機関があります。また導入に伴う手数料も月5000円から1万円程度とそれほどの負担感はありません。
事業の財務体制の強化のためにも、何よりも自分の老後資金作りとしても企業型を検討してみてください。