今回は、法人成りをした場合の、個人型確定拠出年金の掛金の取扱いを見ていきます。※本連載は、株式会社アセット・アドバンテージの代表取締役で、ファイナンシャルプランナーとしても活躍する山中伸枝氏による著書、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)より一部を抜粋し、自営業、公務員、会社員などの職業や、年代によって最適な「確定拠出年金の活用方法」をご紹介します。

一人社長でも企業型確定拠出年金を導入できる

<ケース8> 個人事業主

 

個人事業主として税理士に決算をお願いしていたりすると、比較的早くから「節税のために」個人型確定拠出年金を勧められたりすることも多いようです。しかし法人成りをして厚生年金の加入者になると、ほとんどの税理士は「会社員の個人型確定拠出年金の掛金が月2万3000円です」と説明します。

 

これは決して間違ったアドバイスではないのですが、少なくとも経営者としては厚生年金被保険者として個人型確定拠出年金をするも良いし、厚生年金適用事業所として企業型確定拠出年金を導入する選択肢もあるのだということは、ぜひ知っておいてほしいと思います。

 

実はほとんど知られていませんが、一人社長であったとしても厚生年金に加入していれば企業型を導入することが可能です。

 

企業型と個人型を比較すると、まず掛金の上限が違います。個人型は月2万3000円ですが、企業型は月5万5000円です。金額が倍以上違いますから資産形成のスピードが違います。

「全額損金」で退職金を作ることが可能に

個人型の掛金拠出は60歳までですが、企業型は契約で65歳まで引き上げることができます。その分税制メリットを長く享受できますから、やはり企業型は魅力があります。

 

特に個人型は掛金が全額所得控除ですが、その掛金を給与として出す場合、2万3000円の役員報酬アップはすなわちそれにかかる15%の社会保険料のアップにつながります。一方で、企業型は会社の損金として掛金を計上でき、掛金は社会保険料の算定対象になりません。いわゆる全額損金で退職金が作れる。それが企業型確定拠出年金です。

 

企業型はある程度の事業規模がないと導入できないと思われている場合が多いのですが、実際一人社長であっても、企業型の導入を受けてくれる運営管理機関があります。また導入に伴う手数料も月5000円から1万円程度とそれほどの負担感はありません。

 

事業の財務体制の強化のためにも、何よりも自分の老後資金作りとしても企業型を検討してみてください。

本書に記載されている情報は、2016年10月執筆時点のものです。本書に記載された商品やサービスの内容や価格、URL等は変更される場合があります。本書の出版にあたっては正確な記述につとめましたが、著者や出版社などのいずれも、本書の内容に対してなんらかの保証をするものではなく、内容やサンプルに基づくいかなる運用結果に関してもいっさいの責任を負いません。

ど素人が始めるiDeCo  (個人型確定拠出年金)の本

ど素人が始めるiDeCo (個人型確定拠出年金)の本

山中 伸枝

翔泳社

確定拠出年金(iDeCo)は、公的年金だけでは不足しがちな老後資金を補うものです。基本的に毎月掛け金を積み立て、それを貯金や投資商品に回します。 本書は、節税と資産形成に非常に有利なこの制度の仕組みをやさしく解説し…

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