今回は、パート主婦が知っておきたい、iDeCoを活用した「退職金」の作り方を紹介します。※本連載は、株式会社アセット・アドバンテージの代表取締役で、ファイナンシャルプランナーとしても活躍する山中伸枝氏による著書、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)より一部を抜粋し、自営業、公務員、会社員などの職業や、年代によって最適な「確定拠出年金の活用方法」をご紹介します。

確定拠出年金で「月2万円の積立」を行う

<ケース12> パート主婦

 

パートで働く主婦は常に103万円の壁を意識していると思います。103万円の壁とは、パートの給与収入103万円から65万円の給与所得控除という経費と納税者一人ひとりに認められる38万円の基礎控除を差し引くと、所得がゼロとなり所得税がかからない年収のボーダーラインのことです。

 

年収103万円以下のパートの主婦が、確定拠出年金を利用して自分年金の積立を行ったところで、所得控除を受けるそもそもの所得がないわけですから、拠出時の節税メリットはありません。

 

しかし運用益が非課税となるメリットは少額投資非課税制度(NISA)よりも大きいですし、何より受け取り時に加入期間が退職所得控除となるので、非課税の退職金を作ることができます。これは大きいです。

 

もし、もう少し働ける環境であれば、あと月2万円分働きましょう。そして確定拠出年金で月2万円の積立をして、自分のための退職金を作りましょう。年間の収入103万円+24万円で127万円となりますが、給与所得控除、基礎控除、小規模企業共済等掛金控除(確定拠出年金の所得控除の名称)を足すと経費が127万円となり、所得税を支払うことなく年収を増やすことができます。

 

会社としても、ベテランのパートに103万円の壁にあわせて働き方を調整されると、その分新しい人を雇わなければならず、人件費のアップにつながります。月2万円分の延長勤務は会社にとってもメリットになるはずですから、申し出をしてみると良いかと思います。ただ年収が130万円を超えると自分で社会保険に加入しなければならなくなるので、月2万円が目安です。

傷病手当金など、様々な保障を受けられる「社会保険」

ただし2016年10月より、従業員501人以上の会社に勤めるパートは、年収106万円以上で社会保険に加入することになります。また今後、パート主婦の社会保険加入年収の引き下げは小規模事業所にも拡大される予定なので、社会保険加入を視野に働き方を考えるべきです。

 

社会保険加入と聞くと、保険料負担ばかりが気にかかるかもしれませんが、良いこともたくさんあります。

 

例えば傷病手当金というものがあります。これは、病気療養で仕事ができないときに、給与の3分の2の給付が健康保険から受けられるものです。出産手当金育児休業給付金など子どもを産み、育てることに対する保障も近年とても充実してきました。

 

●出産手当金・・・出産日(出産が予定日よりあとになったときは、当初の出産予定日)より以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降の56日まで、欠勤し給与の支払いがなかった期間を対象として、給与額の約3分の2が支払われます。また、被保険者あるいはその被扶養者が出産した際には出産育児一時金として一児につき42万円が支給されます。

 

●育児休業給付金・・・子供が1歳になるまでの期間(特別な理由がある場合は最長1歳6カ月まで)、・育児休暇開始~180日目:月給の67%・育児休業開始から181日目以降:月給の50%の育児休業給付金を受給することができます。

 

さらに、厚生年金の上乗せを得ることができます。障害年金、遺族年金、老齢年金です。特に老齢厚生年金は、給与額に比例して65歳からの受け取り額が増える仕組みです。「給与×0.5481%×厚生年金加入見込み月数」で見込み額を計算することができます。

 

●障害年金・・・障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があります。障害基礎年金は、初診日段階で国民年金に加入しており、病気やけがで、法令で定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にある間に支給されます。それに加え厚生年金に加入している場合は、基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。障害の状態が2級に該当しない軽い程度の障害のときは3級の障害厚生年金が支給されます。初診日から5年以内に病気やけがが治り、障害年金を受ける条件よりも軽い障害が残った場合には一時金が支給されます。

 

●遺族年金・・・被保険者が死亡した際、遺族に支給される公的年金のことです。遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金、遺族厚生年金など様々ありますので、それぞれの要件をしっかりチェックしておきましょう。

 

仮に給与30万円で30年間会社員として仕事をすると、65歳から受け取れる老齢厚生年金がおよそ月5万円増やせます。これもまた終身でもらえる自分年金ですから、働き方を見直すことはとても重要です。

 

それに加えて月2万円の確定拠出年金を30年続ければ、元本だけで720万円の自分自身への退職金が作れます。給与が30万円あれば、社会保険料を負担しても、手取りがしっかり確保できるので日々の暮らしにもゆとりができます。

 

注意点としては、妻が働くことで夫の配偶者控除が減ったりなくなったりして、若干税負担が増えることです。また夫の会社から家族手当などを受けている場合、年収によってはその手当が停止になることもあります。

 

しかしライフプランとして考えると、夫婦2人で働くということがリスクヘッジでもあり、お金の成長も加速することになるので、長期的な視野でこれからの働き方を考えるべきでしょう。

本書に記載されている情報は、2016年10月執筆時点のものです。本書に記載された商品やサービスの内容や価格、URL等は変更される場合があります。本書の出版にあたっては正確な記述につとめましたが、著者や出版社などのいずれも、本書の内容に対してなんらかの保証をするものではなく、内容やサンプルに基づくいかなる運用結果に関してもいっさいの責任を負いません。

ど素人が始めるiDeCo  (個人型確定拠出年金)の本

ど素人が始めるiDeCo (個人型確定拠出年金)の本

山中 伸枝

翔泳社

確定拠出年金(iDeCo)は、公的年金だけでは不足しがちな老後資金を補うものです。基本的に毎月掛け金を積み立て、それを貯金や投資商品に回します。 本書は、節税と資産形成に非常に有利なこの制度の仕組みをやさしく解説し…

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