従業員が制度を利用するには「労使の合意」が必要
<ケース9> 中小企業の会社員と経営者
2018年5月までをめどに、従業員数が100人以下の会社を対象とした、「小規模事業主掛金納付制度」が始まります。これは逆マッチングともよばれる制度で、簡単にいうと事業員が任意で加入している個人型確定拠出年金の掛金に対し会社は「支援してあげても良い」という制度です。
支援してあげても良いといっても、従業員が会社に支援を申し出ればすぐに通るというものではありません。会社側が社員側の代表者と話し合いをもち支援するかどうか決定します。従業員は労使の合意がなければ支援を受けることはできませんが、少なくとも話し合いの場を設けてもらえるようお願いをしてみる価値はあるでしょう。
具体的には、個人型の毎月の掛金上限内で企業が掛金を上乗せ拠出する制度です。例えば社員が月1万円を個人型確定拠出年金に拠出をしていると、会社がその1万円に上乗せをして掛金を出してくれるのです。実質給与アップですので、可能な人はぜひ使うべきです。
ただしこのとき、かならず個人の掛金は給与天引きにしなければなりません。これまで個人の口座引き落としで掛金を拠出していた人は、変更が必要となります。企業は、給与天引きをした個人の掛金に企業からの拠出金を足して、会社指定の口座から掛金が引き落とされます。
その際、複数の社員が複数の運営管理機関でそれぞれ取引をしている場合、掛金引き落としもそれぞれの運営管理機関からとなりますので、多少手続きが煩雑になります。また掛金を給与天引きする場合、会社は毎月の源泉税の調整も必要となります。
企業の社会保険料負担の軽減につながる場合も
もし会社として事業主拠出をしても良いと考えているのであれば、早めに企業型の導入を検討するのも良いでしょう。企業型であれば掛金5万5000円まで労使併せて拠出をすることが可能です。企業の掛金は企業型のルールで決めるので、小規模事業主の掛金納付と基本的には同じです。
ただ従業員の掛金は「選択制」という仕組みを使うので、掛金拠出額が社会保険の算定対象外となり社会保険料の負担の減少につながります。「選択制」とは、掛金を拠出するかどうか従業員本人が決められる財形貯蓄のような制度で、最近大企業でも取り入れられています。
いずれにしろ、企業が拠出してあげられる要素があるのであれば、ぜひ積極的な従業員支援をお願いしたいところです。また従業員側としても、自分たちに有利になる制度であるのならば、会社に積極的に提案してもらいたいと思います。