今回は、厚生年金との「一元化」が公務員の老後に及ぼす影響について見ていきます。※本連載は、株式会社アセット・アドバンテージの代表取締役で、ファイナンシャルプランナーとしても活躍する山中伸枝氏による著書、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)より一部を抜粋し、自営業、公務員、会社員などの職業や、年代によって最適な「確定拠出年金の活用方法」をご紹介します。
「月2万円終身で受け取れる権利」を失った公務員
<ケース11> 公務員
平成27(2015)年10月に共済年金は公務員の「優遇」とされていた職域加算が廃止され、会社員の厚生年金と一元化されました。
職域加算は月2万円程度の上乗せ年金といわれており、この部分が今後廃止されることになったわけですから、これからの公務員は月2万円終身で受け取れる権利を失ったことになります。
職域加算が廃止になった代わりに導入されたのが年払い退職給付です。これはモデルケースで月1.8万円の上乗せ年金といわれています。月2万円の職域加算と1.8万円の年払い退職給付では月あたりたった2000円位の変更と思うかもしれませんが、かなり大きな変化となっています。
「年払い退職給付」にも影響が…
まず職域加算は公的年金なので、配偶者は受給者が亡くなったあと遺族年金としてその額の4分の3を終身で受け取ることができました。
しかし年払い退職給付は一部終身年金、一部有期年金です。例えば10年確定年金であれば、保証期間10年までの間に受給者が亡くなれば、未支給の分は遺族が受け取ることができますが、保証期間以上の年金は受け取れません。
また年払い退職給付の終身年金は、受給者が亡くなったらそこで支給はストップになり、職域加算のように遺族に支払われることはありません。
何よりこれとは別に退職金が平均400万円カットになると発表されています。これらの変更によるマイナスを埋めるものが確定拠出年金になります。
年払い退職給付は企業年金と同じ位置づけで、加入者も保険料を負担するようになります。これまで公務員が優遇されてきた保険料についても、今後徐々に厚生年金と同じになります。
公務員の場合、これまで優遇されていた部分が厚生年金加入者と全く同等になったので、老後の生活をしっかり考える必要があるということです。
株式会社アセット・アドバンテージ
代表取締役
1993年、米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務し、人事、経理、海外業務を担当。留学経験や海外業務・人事業務などを通じ、これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーを目指す。
2002年にファイナンシャルプランナーの初級資格AFPを、2004年に同国際資格であるCFP資格を取得した後、どこの金融機関にも属さない、中立公正な独立系FPとしての活動を開始。金融機関や企業からの講演依頼の他、マネーコラムの執筆や書籍の執筆も多数。
個人相談も多く手がけ、年金、ライフプラン、資産運用を特に強みとしており、具体的なソリューション提供をモットーとする。
著書に、『「なんとかなる」ではどうにもならない定年後のお金の教科書』(クロスメディア・パブリッシング)、『ど素人が始めるiDeCoの本』(翔泳社)、『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東京経済新報社)、『会社も従業員もトクをする! 中小企業のための「企業型DC・iDeCo+」のはじめ方』(同文舘出版)などがある。
●確定拠出年金の相談ができる全国のFPネットワーク
「FP相談ねっと」代表
https://fpsdn.net/
●公的保険のプロアドバイザーを育成する
「一般社団法人 公的保険アドバイザー協会」理事
https://siaa.or.jp/
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