今回は、不動産の売却における「簿価」について解説します。※本連載では、キャピタリー・アドバイザリー株式会社不動産投資部長 和田一人氏の著書『儲かる不動産投資の教科書』(扶桑社)の中から一部を抜粋し、本当に価値のある不動産を見分ける理論的な評価方法を、初心者でもわかりやすい事例を紹介しながら、その根拠となる評価基準を解説します。

「簿価」は年々減少していく

会計処理上の言葉に「簿価」というものがあり、不動産投資においても日常的に用いられています。その名の通り、帳簿に記載されている資産などの価格のことです。

 

不動産の場合は、取得する際に支払った金額がその時点での「簿価」となり、そこから年々減少していくようになっています。したがって、景気に左右される「時価」とは金額が異なっている可能性が非常に高いわけです。

 

では、ここでクイズを出したいと思います。次のAさんとBさんでは、どちらのほうが儲かっているでしょうか?

 

Aさん:「簿価」7000万円の物件を「時価」8000万円で売る

Bさん:「簿価」8000万円の物件を「時価」8000万円で売る

 

常識的に考えれば、「簿価」が「時価」よりも1000万円も安いAさんのほうが儲かっているはずです。会計上では、「8000万円-7000万円=1000万円の利益」と記載されます。

 

これに対し、当然のごとくBさんのほうは利益ゼロです。したがって、Aさんの圧勝ということになりそうですが、不動産投資の場合は見落としてはならない重要な論点があります。

「会計上の利益」が出ていなければ課税はない

もしも、2人ともローンを組んでそれらの物件を買っていて、残債があったとしたらどうなるでしょうか?

 

どちらもローンの残高が8000万円で、どちらも売却代金で一括返済すると仮定します。

 

すると、会計上の利益1000万円が発生しているAさんは、売却金を返済に充てて手元に資金が残っていないにもかかわらず。所得税(会社で購入した場合は法人税)などの税金を徴収されてしまいます。

 

一方、プラスマイナスゼロで会計上の利益が出なかったBさんは、当然ながら課税なし。売却代金でローンを完済してチャラになります。

 

そしてもし、ローン残高が7000万円だった場合、Aさんはもっと悔しい思いをしそうです。売却代金でローンを完済した後、いったんは1000万円を手にしますが、会計処理では1000万円の利益を計上していますので、そこから税金を差し引かなければなりません。

 

法人で購入していて40%の法人税が課されたと仮定すると、手元に600万円しか残らないわけです。その点、Bさんは会計上の利益がゼロで課税なしですから、ローンを完済した後は1000万円が丸ごと残ることとなります。

 

なお、不動産の「簿価」は年々減少していくと言いましたが、これを「減価償却」と言います。

 

建物部分は経年とともに劣化していきます。そこで、税法上で定めた計算方式に基づいてその年の劣化分を経費として計上することが認められており、それがいわゆる「減価償却」です。

 

不動産の「簿価」は、物件購入時に支払った金額から毎年の「減価償却費」の累計を差し引いたものとなるわけです。

 

土地価格と比較して建物価格が高いケースでは、減価償却による節税効果が期待できる半面、それだけ「簿価」も減りやすくなる点に留意すべきです。

 

一方、融資残高は「簿価」よりも早く減るケースが多くなっています。なぜなら、融資残高には土地価格も含まれているのが通例だからです。

 

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本連載は、2016年2月刊行の書籍『儲かる不動産の教科書』から抜粋したものです。その後の法律、税制改正等、最新の内容には対応していない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

儲かる不動産投資の教科書

儲かる不動産投資の教科書

和田 一人

扶桑社

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