オフィスにかかる水光熱費は一応オーナー負担だが・・・
資金力に限界のあることが多い個人投資家であっても、投資対象がマンションやアパートのようなレジデンス(居住用不動産)に限られているわけではありません。上級者の中には中小規模のオフィスビル1棟や、もっと規模の大きいオフィスビルのフロア所有といった投資を行っている人が増えています。
では、どちらのほうが儲かるのでしょうか?
まず、メンテナンス費についてはオフィスもレジデンスも大差ありません。オフィスの場合、「原状回復費」はすべてテナントの負担となるので、その点ではレジデンスよりも有利です。
水光熱費はオフィスのほうがオーナーの負担は重いのですが、いろいろと裏事情があるのも事実です。いったんはオーナーが1棟分をすべて負担するものの、各テナントから使用量に応じた金額を徴収するのは通例です。
しかも、オーナーが実際に支払った費用よりも高額の請求を行っているケースもあります。その場合は、得られている利ザヤの分だけ「ネット利回り」が高くなるわけです。
ワンルームの場合にも同様のケースはありますが、オフィスほど高額にはならないことが多いです。
建物の固定資産税、都市計画税の基準となる評価額は、一般的には、オフィスのほうが高いと思われます。概算で計算するときもありますが、経験上、基本的にレジデンスよりも高い単価を採用しています。
レジデンスの土地の固定資産税、都市計画税は、税額を計算するための課税標準額が評価額のそれぞれ6分の1、3分の1になるので、オフィスより安くなります。
「ネット利回り」が高くなる場合が多いオフィス
一方、賃料単価については、基本的にはオフィスのほうが高いといえます。
レジデンスの場合、一等地にあるからといって4万円以上の賃料単価になることは考えにくいですが、丸の内のオフィスであればありえます。
つまり、同じ表面利回りでは、オフィスのほうがネット利回りが高くなる場合が多いのです。
賃料に関してはオフィスが「シクリカル(景気敏感型)」であるのに対し、レジデンスは「ディフェンシブ(安定型)」であると言えます。
景気がよくなってくるとオフィスの賃料は上昇傾向を示しますが、レジデンスのほうはさほど変化しません。
景気回復に伴って不動産価格も上昇すれば、新たに投資する物件の利回りはどちらも低下傾向を示しますが、その動きはオフィスと比べればレジデンスのほうが軽微です。
「不況時」はレジデンスへの投資に切り換える!?
仮に、1億円の価格で8%の利回りの物件があったとしましょう。その場合、年間800万円の賃料が得られる計算になります。
たとえばオフィス物件で賃料が2割上昇し、利回りが2%低下したとすると、どうなるでしょうか?
年間960万円に賃料収入はアップする反面、利回りが6%に下がり、「960万円×6%=1.6億円」に物件価格が上昇します。つまり不況時にオフィス物件を購入して好況時に売却できれば、かなり大きなキャピタルゲインを得られることになります。
これに対し、レジデンスは景気がよくなっても賃料はさほど変わらず、物件価格は上昇傾向を示すので利回りだけが下がりやすくなるものの、オフィスほどではありません。
たとえば先程の物件がレジデンスであった場合、賃料収入は変わらないまま、利回りの低下がオフィスに比べて軽微なので1%だったとすると、「800万円×7%=1.1億円」。物件価格の上昇は1400万円程度にとどまることとなります。
もちろん、逆のパターンも然りで、オフィスの賃料や価格は景気が悪くなると下がりやすく、空室リスクも高くなります。ところが、レジデンスは経済が悪化してもすぐには賃料に影響が及びません。
オフィスは1テナントの貸床面積が大きいので、テナントが退去した時の稼働率の低下が大きいのがリスクとなります。
ですので、誰にでもできる投資ではありませんが、上級者であれば、こうした経済に対する感応度に着目すると、「好況時はオフィスへの投資」が有効で、「不況時はレジデンスへの投資」に切り換えるのが最も得策だといえそうです。