現在はインカムゲイン目当てが主流
今から四半世紀以上も前になる80年代末、バブル経済の絶頂期の頃は不動産投資と言えば、誰もがキャピタルゲイン(物件の値上がり益)狙い一辺倒でした。相場がひたすら高騰していったわけですから、無理もない話でしょう。
対照的に、現在はインカムゲイン(賃料収入)目当ての不動産投資が主流です。
とはいえ、今の時代においてもキャピタルゲインをまったく期待できないわけではありません。
たとえば、収益(投資用)物件として供給されたファミリータイプの区分マンションを取得し、それを自宅として使用したい人に売るのです。
収益物件は利回りがそれなりに高くなければ売れ行きが悪くなりますから、純粋な分譲マンションよりも価格が割安に設定されがちです。ところが、マイホームを手に入れたい人たちが参加する実需のマーケットでは、利回りを度外視した物色が行われています。
その結果、収益物件の相場との間に歪み(価格差)が生じやすいわけです。つまり、その点に着目すれば、収益物件を安く仕込んで実需のマーケットで高く売ることが可能となります。
もちろん、区分所有ではなく、1棟丸ごと購入できる余裕があれば、さらに大きなキャピタルゲインを追求できるでしょう。また、同じような着眼点から収益物件の戸建て住宅を買って、自宅を欲しがっている人に売るのも手です。
一筋縄にはいかないキャピタルゲイン狙い
なお、プロは素人の個人投資家にできるだけ高く売りたいと考えていますが、それでも同業である転売業者に売らざるをえないケースも出てきます。当然、個人投資家を相手とする場合よりも買い叩かれることになります。
プロでさえ、「安く仕込めた!」と思っていても、見込み違いで希望の値段で売れないケースもあります。
言い換えれば、それだけキャピタルゲイン狙いは簡単ではないということです。プロの世界を見渡しても、長期的にキャピタルゲイン一筋で生き残ってきた会社はまずないような気がします。
景気に左右される色彩が強いこともあって、とてつもない利益を得る局面が訪れる一方で、2008年のリーマンショック直後のように苦境に立たされることも覚悟しなければなりません。
キャピタルゲインだけに的を絞るのは、たとえプロであってもかなりリスクが高いと結論づけられるでしょう。
けれど、「キャピタルゲインは一切求めるな!」と私は訴えているわけでもありません。
個人投資家がプロよりも圧倒的に有利な理由
長くインカムゲインを得つつ、最終的に首尾よく売り抜けるという“出口戦略”も、投資を始める時点にきちんと練っておくべきです。
つまり、最後にはキャピタルゲインを得ることを念頭に置き、インカムゲインを重視して物件を取捨選択するというスタンスが最も望ましいと考えているのです。
毎月、ローンや諸経費を払いながらしっかりとプラスのインカムゲインを確保することを大前提としたうえで、高く売れる局面が訪れればその機に転売するか、あるいはさらに所有し続けるかを吟味するわけです。
心に余裕が生じる投資こそ、着実に成功を呼び寄せると思います。その点、プロは時間的な制約があるので、相場が急変するとすぐさま対処を迫られます。
必要に迫られれば、買った価格よりもはるかに安く手放すしかありません。賃料収入でローン金利を十分に支払える状態であっても、「当初の事業計画と違うからダメだ」の一点張りで、融資期間の延長を受け入れてもらえないのです。
実際、リーマンショックでは、そういった事情から数多くの不動産会社が倒産しました。
しかし、個人投資家は、毎月の返済が滞っていなければそのような事態に陥ることはありません。一定の賃料収入を着々と得ている限り、売る時期については自分にとって都合のいいタイミングを選べるのです。
その意味で、個人投資家はプロよりも圧倒的に有利です。