最低限のフレーズと動きを交えた丸暗記が役立つ
今回は、英語による接客サービスの研修を受けた、銀座の寿司店にその体験談を語っていただきます。
体験談◆魚治はら田 さん
「『出迎え』の挨拶が最重要。電話対応には苦労しました」
※東京都中央区銀座七丁目に位置する、2003年6月創業、席数16席程度のお寿司屋さん。海外からのお客様との会話は、寿司のネタに関してだけでなく日本の包丁や器、道具にまでおよぶ。
銀座という場所柄、私たちは来日するお客様の傾向や日本での動向などは肌で知っています。これは私だけではなく、銀座に店を出している同業者たちも皆同じです。
これまでも外国のお客様をお迎えすることも多く、得意ではない英語に身ぶりや手ぶりを交えた接客で、必要最低限のコミュニケーションだけは何とか取ろうと思ってきました。しかし、2020年の東京オリンピックが決まり、ユネスコで「和食」が世界遺産に登録されてから、きちんとコミュニケーションを図りたいという意識がさらに強くなったことは確かです。
英語による接客サービスの研修を受けるにあたり、私が一番知りたかったことは、やはり「出迎え」の挨拶でした。ここを大切に扱うかどうかで、お客様の印象はガラリと変わりますからね。そして席に着いていただいたら、まずはお客様の苦手なものを聞く必要があります。「お飲み物は?」は定番表現ですが、これも必ず伺わなければなりません。
実はこのあたりは、教えてもらったフレーズを丸暗記しています。最初から多くを望むよりも最低限のフレーズをしっかり覚えていくことにしました。実際の動きをまじえての丸暗記ですね。
それから実経験から接客に必要だと思われるフレーズを教えてもらいながら、虎の巻を作りました。これは本当に役立っています。
1日の多くの時間を営業に使っているわけですから、勉強する時間の確保にはなかなか難しいものがあります。しかし、実際の場面に即したコミュニケーションを取る練習で、短時間で慣れていくという利点があったと思います。
難しい電話対応も、キーワードを聞き取ることで・・・
一番難しいと感じたのは「電話」での対応でした。しかし、多くの場合「予約」のための電話なので、reservation, reserveなどのキーワードが聞き取れれば、後はある程度予想が立つようにもなってきます。相手からの質問を一方的に受ける前に、こちらから尋ねていくのがポイントだと思っています。顔の見えない相手ですから、電話を受けるとき、受話器を置く前をとても大切にしています。
口コミでいらっしゃるお客様も多く、いかにリピーターになっていただくかを大切に考えています。
お客様はそれこそ、世界中から。中国系、シンガポール、香港などのお客さんが多くいらっしゃいます。
外国人のお客様は実は日本人よりも日本文化に関心を抱き、またこだわりもあります。
「しゃり、ガリ、海苔」なども普通に知っていらして、包丁など道具や、器ひとつについても興味をもちます。道具の手入れ法などもいずれはきちんと伝えていければと思います。図鑑も役に立っています。お客様に説明するときは、図鑑をお見せします。やはり、言葉で言うよりもずっと理解してもらえます。そのような些細な工夫でずいぶん助かっています。
研修を受けたこの2年間で、自分自身の反応の変化も感じています。最初は自分に自信がないために笑顔が出る余裕もありませんでしたが、今ではそれなりにお客様とのコミュニケーションを楽しむことができています。世界の共通語、英語を覚えることによって可能性が広がるのを実感する日々です。