口先だけの賞賛はNG
ではここで、5つのAの④Affirm「お客様を肯定する」について見てみましょう。
「肯定すること」は何も難しいことではありません。他の人を褒める前向きな発言と考えればわかりやすいでしょう。
「今日は箱根で初めて雪を見たの」というお客様の喜びを「わあ、すごいですね。素晴らしい経験をなさいましたね!」と受けとめる。あるいは、両親のそばでお利口にしているお子さんたちを見て「お子さんたちは、ずいぶんお利口さんですね」と素直に口に出すこと、それも「肯定する」ことになります。
レストランでは、会話の中で家族写真を見せられた時に「素晴らしいお子様ですね」とか、毛皮のコートを着ているお客様に「素敵なコートですね」などといった声かけが使えるでしょう。
ここで覚えておかなければならないのは、口先だけのセリフを言っても相手には決して伝わらないということです。心からそう思うこと。それが大切です。
「褒めるところがなければどうしたらいい?」という質問が聞こえてきそうですが、簡単なことです。常に相手の良い点を見るようにすること。それが「肯定する」ことにつながります。
「相づちを打つ」こともAffirm 「お客様を肯定する」ことになります。ただし、「相づち」をただ打てば良いというものではありません。相手の言葉を決して遮らないこと。話をきちんと聞いている姿勢は言葉や態度で示さなければなりません。
言葉だけ親身に装っていても、表情が伴わなければ、心を見透かされてしまいます。言葉と態度の一致が重要です。「今日はね、実はね……」。お客様がたった今経験してきたことをあなたに話し始めることがあるでしょう。
よほど腹に据えかねたのか、なかなか話が途切れません。黙っているわけにもいかず、つい「はい、そうですか、そうでしたか」と矢継ぎ早に相づちを打ってしまうかもしれません。お客様のお話を無視してはいけないという精いっぱいの思いからYes, yes……を入れてしまう場合もあるでしょう。
ゲストが焦っている場合は「安心させるフレーズ」を
では、良い相づちはどのように習得できるでしょうか。
「相づちにスキルなんてあるの?」。そう思うかもしれませんが、実はあります。日本人は相づち名人ではありません。概して早く相づちを打ちがちです。
次のような事例はどうでしょうか。お客様がホテルのフロントに駆け込んで来ます。明らかに動転しているのが見てとれます。
「停留所を間違えて、バスに乗り遅れてしまった」
お客様が楽しみにしていた1日東京見物のコースです。お客様は明らかにパニックに陥っています。
まずはきちんとお客様のお話を伺い、状況を把握しましょう。そのときには、焦っているお客様と同じペースにならないように気をつけましょう。自分も焦りそうになったら、スタッフとしての自分の立場にしっかり踏みとどまることです。
お客様が焦っている、パニックに陥っている場合などは特におざなりの相づちは避けましょう。Right. やI see. など、きちんとした英語できれいな相づちを打ちます。このAffirm「肯定する」 の動作は、お客様をAssure「安心させる」ための一つのステップとなります。
このような場面で使えるフレーズを、相づちから提案への流れに沿って次のページで見てみましょう。
<お客様への相づちから提案までの流れ>
▼まずはお客様の立場を肯定する
●I understand what you say.
「おっしゃることはわかりました」
●I see your point.
「わかります」
▼解決策を提案する
●Here’s what I can do for you.
「それではこうしましょう」
●I’m not sure whether I can do everything you need, but I’ll contact thetravel agent and have him/ her call you back soon.
「お客様がお望みになることをすべてできるかわかりませんが、とにかくトラベルエージェントに連絡して、すぐにお客様に電話をかけてもらうようにします」
●So, you have your schedule rearranged.
「そうすれば、スケジュールを再調整できます」
▼現状を伝える
●That’s what I’m going to do.
「今できることはそんなところです」
▼状況を説明した後にお客様の気持ちを確かめる
●Would that be fine with you?
「それでよろしいですか?」