前回は、相続税対策に「生命保険」が有効な理由を解説しました。今回は、生命保険の活用で「揉めない相続」が実現できる理由を見ていきます。

公平に分けるのが難しい財産構成の場合は・・・

前回の続きです。

 

相子 「②遺産分割の公平性を高められる」というのはどういうことですか?

 

北井 はい。では、2億円の土地と4000万円の預貯金が遺されたF家を例に考えてみましょう。遺言書で「土地は長男に、残った預貯金を長女と次男に譲る」と書いてあったとします。

 

相子 でも、それだと長男の相続財産が2億円で、残った子供が2000万円ずつということなので不公平ですよね。法定相続分通りなら長女も次男も8000万円ずつもらえるはずですから。

 

北井 はい、そうです。相子さん、よく勉強されていますね。では、その場合、長女と次男が「遺留分減殺請求」を起こすとどうなりますか?

 

相子 えーと……遺留分は法定相続分の半分なので4000万円ずつです!

 

北井 うんうん。そうですね。預貯金の2000万円はすでに受け取っているので、さらに2000万円を相続財産としてもらう権利が長女と次男に認められます。

 

相子 でも、長男は先祖代々の土地を売りたくないでしょうから、「代償分割」を使ってもよいんじゃないですか?

 

北井 ほほう。いいアイディアですね。長男から長女、次男にそれぞれ代償となるお金を渡せば、たしかに納得してもらいやすいと思います。ただしその場合には長男に多額の資金が必要ですね。土地の納税資金だけでも高額ですから、用意するのは非常に難しいかもしれませんね。

 

相子 なるほど! そこで生命保険なんですね。

 

北井 そうです。あらかじめF 家の被相続人が子供3人を受取人とする生命保険に加入しておけば、それぞれがお金を受け取ることができるので、長女や次男も納得しやすくなります。長男は受け取った生命保険金を納税資金に充ててもいいですし、長女や次男の相続額が生命保険金を加えても足りないのであれば、自分が受け取った分を代償分割として渡すこともできます。

 

相子 生命保険金も利用の仕方でいろいろ役立つんですね。

 

北井 そのとおりです。葬儀やお墓も大切ですが、遺された家族にトラブルが起きないよう配慮することはもっと大事ですよね。

 生命保険金の「非課税枠」を使えば相続税対策も可能

相子 「③相続税を節税できる」というのも、家族にとってとてもありがたいことですよね。具体的にはどうするんですか?

 

北井 生命保険金に設けられている非課税枠を使います。被相続人が契約者および被保険者になって、相続人を受取人とする生命保険に加入しておけば、相続の際に相続人が受け取る生命保険金に対して500万円×法定相続人数の控除枠が使えるというのはお伝えしたと思います。

 

相子 F家のように子供3人が法定相続人なら1500万円……。

 

北井 はい。それぞれを受取人とする死亡保険金2000万円の生命保険なら死亡時には合計6000万円の保険金が子供たちに渡りますが、非課税枠があるため相続財産に算入されるのはその分を差し引いた4500万円だけです。

 

相子 保険に入るだけというのは簡単でわかりやすいですね。

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    本連載は、2016年12月14日刊行の書籍『「相続」のことがたった1時間でわかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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