前回は、払いすぎた相続税が還付されることもある「更正の請求」について解説しました。今回は、相続税の還付につながるケースもある「広大地の適用」について見ていきます。

相続税額が大きく割り引かれる「広大地の適用」

前回の続きです。

 

北井 なかでも税理士が一番そう判断するのが、「広大地の適用」です。

 

相子 「広大地」というのは広い土地ということでしょうか?

 

北井 土地は広さによって単位面積あたりの値段が変わります。同じ立地、同じ条件の土地でも、住宅に適した100㎡の広さなら1㎡あたり30万円で買い手がたくさん見つかります。「家を建てたい」という個人から「家を建てて売りたい」という事業者まで非常にたくさんの買い手候補が世間に存在するからです。ところが1000㎡の土地になると個人が買うには大きすぎ、そうなると買えるのは一部の事業者などに限られます。競争原理が働かないので「1㎡あたり15万円にしないと売れない」ということにもなります。

 

相子 相続財産として評価するときにも、広い土地についてはそういう事情を汲んで低い価額にされるということですね。

 

北井 そうです。通常は路線価などを参考に相続税評価額が決められますが、広大地の場合は「広大地補正」という補正率に従って割り引かれることとなっています。たとえば1000㎡の土地なら45%、5000㎡以上なら65%も減額されます。ところがここで問題が起きます。どのような土地が「広大地」と認定されるのか、その基準が複雑であるため判断が非常に難しいのです。

判断に自信がある税理士しか適用を申告しない!?

相子 「広大地」の認定はどのようになされるのですか?

 

北井 その問題は個別の事情によって大きく変わるため、非常に難しいんです。ですから相続に詳しい税理士がもともと少ない上に、不動産にも詳しい税理士となるとかなり稀少です。「広大地」についてはさらにごく一部の税理士にしか扱いづらいものになります。

 

相子 そうなんですね。そうすると、判断に自信がない税理士さんは「広大地」として申告できないですね。

 

北井 広大地の申請を試みて否認されると多額の追徴課税が発生する危険性があるので、よほど自信がある税理士しかやりません。でも申請しないのは「間違い」なので、更正の請求をすると土地の評価をやり直すことにより、多額の相続税が還付されるのです。

 

相子 えっ!? 「更正の請求」にペナルティを科されたりといったリスクはないんですか?

 

北井 はい。相続税はすでに支払われているので、「更正の請求」をしたからといってそれ以上追徴されることはありません。「更正の請求」を手がける税理士もほとんどの場合成功報酬しか受け取りません。相続人はノーリスクで、場合によっては数億円という還付が受けられることがあるのです。

 

相子 そうなんですか!? 還付の可能性があるなら、やってみない手はありませんね。

 

北井 私のところでは還付の可能性を判断できるチェックシートを作っていますから、もしすでに相続がすんだ方なら一度チェックされることをおすすめします。

 

まとめ

● 被相続人の生前に仏壇やお墓など祭祀財産を購入すれば手軽に相続税対策ができる

● 農地や山林には相続に際して特例があり、利用すると相続税を抑えられる

● 相続税を支払ったあとも約5年以内に更正の請求をすれば還付を受けられることがある

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    本連載は、2016年12月14日刊行の書籍『「相続」のことがたった1時間でわかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    北井 雄大

    幻冬舎メディアコンサルティング

    相続税の納税資金が足りず資産を手放すことになった、知らぬ間に親が多額の借金をしていた、相続財産の分配について家族間で争いが起こった…。相続では、正しく対策を打っておかなければ、残された家族が大きなトラブルに巻き…

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