前回は、相続開始前に仏壇やお墓を買っておくべき理由を解説しました。今回は、払いすぎた相続税が還付されることもある「更正の請求」について見ていきます。

相続開始から5年10か月以内なら請求可能

余計な納税を避けるために、相続税対策がとても重要なことがおわかりいただけたと思います。税務署は過少申告は見逃しませんが、多すぎる申告にはなにも言ってくれないことが多いです。では、払いすぎた税金を還してもらう方法はないのでしょうか?

 

● 相続税納付後に税金が還付される「更正の請求」

 

相子 こうして見ていくと相続税対策は被相続人が亡くなる前に行っていくのがとても重要なんですね。でも先生、そうは言っても、相続が始まったあとに相続税を軽減できる方法はないんですか?

 

北井 相子さん、とてもいいところに気づきましたね。実は非常に有効な手段があるんです。「更正の請求」と呼ばれるものです。

 

相子 なにかを請求する手続きということでしょうか?

 

北井 相続税の申告に間違いがあったり、事情が変わったりしたことなどを理由に相続税の申告をやり直すのが「更正の請求」です。新たな申告が認められたらすでに納めた相続税から非常に大きな金額が還付されることがあります。

 

相子 それはすごい!相続税を一度納めたあとで、やり直して還付してもらえるなんて!

 

北井 ただし更正の請求には期限があって、相続開始から5年10か月以内と定められています。

請求が認められるのは「申告に誤りがあった」場合のみ

相子 還付してもらえるのはどんなケースが多いのでしょう?

 

北井 まず「更正の請求」が認められるのは「申告に誤りがあった」場合だけです。「遺産分割のやり方などを変えたらもっと節税できた」などのケースは認めてもらえませんので注意が必要です。

 

相子 申告に誤りかあ……。じゃあ、相続税の申告を税理士さんに依頼した相続人はダメですね。

 

北井 そんなことはありません。税理士はみな同じ資格を持っていますが、得意とする分野には違いがあり、実は相続について詳しい人は非常に少ないのです。また、相続の案件はそれぞれ事情が大きく異なるので「どれだけの件数を経験してきたか」によって、申告内容が異なっています。正確できちんとした節税効果のある相続税申告をできるかどうかは、税理士によって全然違うと考えたほうがいいでしょう。

 

相子 そうなんですか。税理士さんを選ぶときにそんなことってあまり考えませんよね。

 

北井 たいていの人が、「知り合いの税理士」や「事業の税務を頼んでいる税理士」に依頼しますが、相続を専門としない税理士の大半は数年に一度くらいの割合でしか、相続案件を手がけません。ですから要件が複雑な特例に関してはミスや内容の理解が浅いなどが意外に多いのです。

 

相子 うーん、そういう事情は考えたこともなかったです。

 

北井 さらに言うと相続に詳しくない税理士はチャレンジをしません。

 

相子 相続に「チャレンジ」があるんですか?

 

北井 節税策として認められるかどうか、詳しい知識が必要な部分には踏み込まず、「多めに申告してすませる」ことが少なくないのです。

 

相子 チャレンジして失敗したら、責任問題になりかねないですものね。

 

北井 そうです。たとえば「相続税を数百万円に抑えた申告が税務署から否認され、あとになって数千万円の追徴課税がくる」ということもあり得ます。税務調査が入るのは相続の2、3年後が多いので、相続人は大あわてすることになります。場合によっては税理士に対して損害賠償請求を起こすこともあるのです。

 

相子 なるほど。そんな危険性を避けるためには、「多めの申告にしておこう」となるのですね。

本連載は、2016年12月14日刊行の書籍『「相続」のことがたった1時間でわかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「相続」のことがたった1時間でわかる本

「相続」のことがたった1時間でわかる本

北井 雄大

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の納税資金が足りず資産を手放すことになった、知らぬ間に親が多額の借金をしていた、相続財産の分配について家族間で争いが起こった…。相続では、正しく対策を打っておかなければ、残された家族が大きなトラブルに巻き…

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