相続において効率的に節税するためには、生前に対策を練ることが必要です。本連載では、税理士法人ティームズの代表社員税理士・北井雄大氏の著書『「相続」のことがたった1時間でわかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)の中から一部を抜粋し、「円満相続」のための相続税対策の基礎知識について解説します。

この連載の登場人物

 

 

 

相続税対策は円満相続のカギです。

うまく節税できなければ税引き後の相続財産が減ってしまい、

相続人全員が満足できるように分けるのが難しくなります。

さまざまな方法をうまく利用して効率的に節税するためには

生前に対策を練ることが必要です。

 

 

贈与税を払わずに、子や孫に財産を渡せる?

久しぶりに実家に立ち寄った相子。今日は弟の相一はおらず、圭子と宗太郎と話をしていると、またもや相続の話が飛び出しました。どうやら、相子がずいぶん相続に詳しくなったことで、父親と母親からすっかり頼りにされている様子。

 

圭子 相子は相続について勉強を始めているみたいだけど、「相続時精算課税制度」って知ってる?

 

相子 まだ勉強を始めたばかりだから、詳しくはわからないけど…。たしか、両親やお祖父ちゃん・お祖母ちゃんから子供や孫に財産を贈るための制度よね。生前に財産をもらうと普通は贈与税が課税されるけど、この制度を使うと贈与税を支払わずにすむんじゃなかったかしら。

 

宗太郎 そうだな。ワシもそのうち利用しようかと思っているんだよ。

 

圭子 あら、初耳だわ。でも、商店街にあるお魚屋さんのE次郎さんの家ではその制度を利用して大変なことになったみたいよ。

 

相子 大変なことって?

 

圭子 E次郎さんは、もともとはお父さんから毎年100万円くらいずつ資金援助を受けていたそうなの。でも、今後の資金作りのために不動産投資をやりたくなったからって、5年前くらいに「相続時精算課税制度」を利用して一気に2500万円も受け取ったんですって。

 

相子 すごい大金じゃない。手続きは自分でやったの?

亡くなってから2年後、突然の税務署員の訪問が…

圭子 ええ。商売をしているから経理は自分でやっているんですって。それで、たしかその「相続時精算課税制度」の上限が2500万円なのよね。だから税金を支払わなくてすんだって、安心していたらしいわ。それでもって翌年からはまた例年通りの額でお金をもらっていたそうなの。ところが、お父さんが亡くなって2年後にいきなり税務署がやってきて、ちゃんと相続税の申告がされていないって大きな額の追徴課税があったそうよ。

 

宗太郎 贈与税じゃなくて相続税で課税されたのか?

 

圭子 ええ、そう言っていたはずよ。だからせっかく買った投資用のマンションも売り払うことになって、ずいぶん大きな損が出たって嘆いていたわ。

 

相子 きちんと制度についての理解ができていなかったんでしょうね。ああいう制度はややこしい条件がいろいろあるから、自分でやろうと思うと大変なのよ。

 

圭子から「相続時精算課税制度」の話を聞いた相子は、気になって早速北井税理士の元へ、相続税対策にはほかにどんなものがあるのかを聞きにいくことにしました。

 

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本連載は、2016年12月14日刊行の書籍『「相続」のことがたった1時間でわかる本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「相続」のことがたった1時間でわかる本

「相続」のことがたった1時間でわかる本

北井 雄大

幻冬舎メディアコンサルティング

相続税の納税資金が足りず資産を手放すことになった、知らぬ間に親が多額の借金をしていた、相続財産の分配について家族間で争いが起こった…。相続では、正しく対策を打っておかなければ、残された家族が大きなトラブルに巻き…

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