前回は、決断する前に知っておきたい「自己破産」のデメリットを解説しました。今回は、世間にはびこる「自己破産に関する誤解」について見ていきます。

自己破産すると選挙権がなくなる!?

自己破産は経験した人があまり公にしないため身近ではなく、多くの誤解がはびこっています。特にデメリットに関するデマは自己破産を判断する上で妨げとなることがあるため、注意が必要です。

 

誤解① 自己破産すると選挙権がなくなる

 

選挙権は国民に等しく与えられている権利であり、経済的な破綻を理由に剥奪されることはありません。同じく被選挙権も保持されるので、極端にいえば自己破産した人が国会議員に立候補することも可能です。

 

誤解② 自己破産すると解雇される

 

従業員の解雇には正当な事由が必要です。自己破産は正当な事由とは認められていないため、それを理由に解雇することはできません。

 

誤解③ 自己破産すると賃貸住宅を退去しなければならない

 

賃貸物件のオーナーや管理会社が入居者の自己破産について情報をつかむことはほとんどありません。また賃貸借契約を結んでいる入居者を退去させるためには正当な事由が必要ですが、自己破産はそれに当たりません。自己破産を理由に退去させられることは考えられませんが、経済的にひっ迫する中で賃料を滞納している場合には、契約に基づいて退去を求められることがあります。

年金の受給権を差押えられる!?

誤解④ 自己破産すると年金が受給できなくなる

 

「自己破産すると年金の受給権を差押えられてしまう」というのはよく耳にする誤解です。自己破産時に清算の対象となるのは申立時点で保有していたものであり、その後に取得するものは整理の対象外とされます(自己破産後に取得した財産を「新得財産」といいます)。自己破産後に受け取る年金はこの「新得財産」となるため、問題なく受給できます。

 

誤解⑤ 自己破産すると海外旅行に行けなくなる

 

自己破産したからといって海外旅行が制限されることはありません。パスポートに自己破産した事実が記載されたり、出入国の際に申告を求められたりしないことからも、渡航の自由と自己破産が無関係であるとわかります。ただし自己破産の手続きを進める過程で一時的に、国内外を問わず長期的な旅行が制限されることがあります。その期間内に旅行をする際には裁判所に対する届け出が必要です。

 

誤解⑥ 預金や現金、家財道具も失い無一文になってしまう

 

もっとも多く信じられている誤解は財産に対するものです。「家や家財道具を失い、無一文になればホームレスになる」という誤解が広く伝わっているため、恐怖感から自己破産を選択できない人もいますが、自己破産手続きにおいても前述のとおり、一定の財産は残すことができます。

本連載は、2017年2月13日刊行の書籍『住宅ローンが払えなくなったら読む本』(幻冬舎メディアコンサルティング)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

住宅ローンが払えなくなったら読む本

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著者 矢田 倫基   監修 矢田 明日香

幻冬舎メディアコンサルティング

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