ブランド側が語る「アブダビで事業を広げる理由」
発表の中身を読むと、各社が単に有名な名前を住宅に付けているわけではないことが分かります。マンダリン オリエンタルの経営トップは、アブダビを、目の肥えた人々が訪れるだけでなく住みたいと考える場所として説明しています。ホテルで培ったサービスを、継続的な居住の場にも展開しようという考え方です※4。
BRABUSにとって、アブダビの計画は初めて自社のデザインを住宅建築に持ち込む事業です。同社CEOは、自動車から暮らしそのものへ対象を広げる機会であり、その舞台としてアブダビがふさわしいと述べています。既存商品の販売先を増やすだけでなく、新しい事業を試みる場所として選んでいる点が興味深いところです※5。
2026年には、マンチェスター・シティも住宅開発との提携を発表しました。クラブ側は、世界的な知名度と、アブダビで続けてきたサッカースクールなどの活動を生かすと説明しています。ブランドごとに狙う顧客や事業は違っても、その次の展開先にアブダビが重なっています※13。
なお、海外ブランドの進出と、海外からの資金投資は同じではありません。開発資金を現地企業が担い、ブランド側は設計、サービス、名称の使用許諾などで参加する形もあります。進出の発表は企業の事業判断として捉え、実際の資金流入は別の数字で確かめる必要があります。
海外からの不動産投資、前年同期の約4倍に
その資金流入も、すでに大きく伸びています。2026年上半期の不動産分野の外国直接投資は、前年同期比309%増でした。エミネンス・レポートが整理したアブダビ不動産センター(ADREC)の統計では、138億ディルハムに達しています。参考換算で約5,934億円、前年同期の約4.1倍です。半年で2025年通年の額を超え、海外在住の投資家の国籍も82から116へ増えました※14,15。
住宅の売買額は、前年同期の253億ディルハムから704億ディルハムへ、約2.8倍に拡大しました。日本円では約3兆円です。その7割を占めたのが、UAEに住む外国人と海外在住の外国人の購入でした。外国人の購入といっても、すべてが海外からの投資ではなく、現地で暮らす人の購入も含んでいます※16。
働く人も増えています。国際金融センターADGMの管轄であるアル・マリヤ島とアル・リーム島では、2026年上半期末の就業者数が前年同期比34%増の4万9,027人に達しました。ブランドの発表だけを追うより、こうした雇用や住宅購入の動きと合わせて見る方が、アブダビの変化を具体的に理解できます※17。

