ホテルブランドによる住宅計画は、エリア評価の明快な手がかり
2026年10月、アブダビでOne&Only(ワン&オンリー)、リッツ・カールトン、JWマリオットの住宅計画の発表や販売開始が相次ぎました。ホテルで知られるブランドが、現地の開発会社と組み、住宅へ事業を広げています。こうした「ブランド住宅」は、世界的な企業がその街の将来をどう見ているかを知る、分かりやすい手がかりです※1,2,3。
アブダビでこの動きが始まったのは、2026年になってからではありません。2024年にはマンダリン オリエンタルがサディアット島での住宅計画を発表。2025年には、自動車のカスタマイズで知られるドイツのBRABUS(ブラバス)や、ブルガリも加わりました。ホテルの世界から、宝飾品や自動車の世界へ。参加するブランドの顔ぶれが広がってきたのです※4,5,6。
ただ、市場に占める割合はまだ小さいといえます。世界的な不動産サービス会社CBREの調査では、2025年1〜9月、アブダビの新築の完成前販売に占めるブランド住宅の割合は、取引件数で約2%でした。一方、同期間のブランド住宅全体の取引件数は前年同期比126%増、約2.3倍に伸びています。限られた市場が急速に拡大し、2026年も新しい計画が続いています。この順序で見ると、変化の大きさがつかめます※7。
買い手の反応も出ています。開発会社アルダーは2025年5月、ヤス島のウォルドーフ・アストリア・レジデンス全133戸が発売当日に完売したと発表しました。売上は8億5,000万ディルハム、約366億円。外国人の居住者と海外投資家が売上の76%を占めました。ブランドの進出に、国際的な買い手が応じた具体例です※8。
ドバイ住宅市場に参加する企業・買い手の層に「変化」
この動きから筆者が思い起こすのは、2020年末以降のドバイです。不動産調査会社ナイトフランクは、その後数年にわたる住宅価格の上昇局面の始まりを、2020年11月としています※10。
当時のドバイにブランド住宅がなかったわけではありません。サヴィルズの2020年版調査では、完成済みのプロジェクトがすでに29件ありました。それが2025/26年版では64件と2倍以上になり、さらに87件が計画・開発中に数えられています。住宅市場が成長する過程で、ブランド住宅も街の一角を占める大きな事業へ育ったことが分かります※11,12。
国際的な買い手が増える街に、ブランドが新たな事業を展開する。そのブランドを知る人が、今度はその街の住宅に関心を持つ。こうした相互の広がりが、アブダビでも起き始めていると筆者は見ています。ドバイと同じ価格上昇を予想するというより、住宅市場に参加する企業と買い手の層が変わりつつある点に注目しています。



