海外不動産の購入、重要なのは「利回り」「価格」だけではなく…
家族との将来のため、円資産だけでなく海外不動産も保有しておきたい。成長する世界の都市で、家賃収入や物件の値上がりを期待したい。そう思うなら、「海外不動産の相続手続」についてもしっかりと対策を考えることが大切です。
購入者自身は現地の担当者とやり取りできても、配偶者や子どもは契約内容はおろか、物件の場所すらよくわからないというケースは珍しくありません。重要な書類や担当者の連絡先を家族と共有していなければ、相続が発生したとき、家族は「ゼロ地点」から財産の確認を始めなければならず、これは想像を絶するほど大変です。
購入前に確かめるべきは、利回りや価格だけではありません。誰にどう引き継げるか、その手続を誰が支えるかまで決めておくことが、家族のためにも重要なのです。
【ハワイ】遺産税の申告と現地の相続手続を見込んでおく
米国では、日本に住む日本人が所有する不動産も、米国の遺産税の対象になり得ます。ハワイのコンドミニアムも米国内の財産です。米国市民でも居住者でもない方の場合、死亡時の米国内財産が6万米ドルを超えると、原則として連邦の遺産税申告が必要です。これは申告の基準であり、超えたら必ず税金がかかるという意味ではありません※1。
日米間には相続に関する租税条約があり、適用条件を満たせば税額控除によって負担が軽くなる場合があります。ただし、控除の計算には日本を含む全世界の財産額も関わります。税額がゼロになっても、条約を適用するための申告は別に必要です。ハワイ州独自の遺産税も確認しておきましょう※1。
名義変更にも現地の手続があります。本人の単独名義で保有する不動産は、通常、裁判所を通じて遺産を管理・分配する「プロベート」を経て家族へ引き継ぎます。信託を使うか、どの種類の共有名義にするかによっても手続は変わります。購入時に名義の持ち方と、死後の手続を頼める専門家を確認しておくことが大切です※1。
【マレーシア】相続税がなくても、州ごとの所有条件を確認
マレーシアには相続税・遺産税がありません。この点はUAEと同じです※2。
ただし、外国人の不動産取得には、最低購入価格や州政府の承認などの条件があります。クアラルンプールなどがある半島部に適用される国家土地法典では、外国人への相続による登記にも州当局の事前承認を求めています。細かな扱いは州によって異なるため、購入時に、日本にいる家族へ引き継ぐ場合の条件も確認しておきます※2。
遺言がある場合は、原則として高等裁判所で、遺言に沿って手続を進めるための権限を得ることが必要です。遺言がない場合には、遺産額などの条件に応じた別の手続があります。日本の遺言や相続書類を用意すれば、そのまま名義変更できるわけではありません。物件所在地の手続を支える弁護士を確保しておくことが重要です※2。
【フィリピン】コンドミニアムの所有条件と遺産税を確認
フィリピンでは、外国人による土地の所有は原則として認められていません。一方、コンドミニアムは、外国人の持分に関する法定上限などを満たせば所有できます。家族へ遺す場合も、引き継ぐ人の国籍や持分の条件を確認します。土地の所有に関する制限と、コンドミニアムを相続できるかという問題は、分けて考える必要があります※3。
相続時には、日本在住の日本人が所有していたフィリピン国内の財産も、遺産税の対象になります。税率は、認められた控除を差し引いた遺産額の6%。申告期限は原則として死亡から1年以内です。名義変更に必要な内国歳入庁(BIR)の証明書を得るため、税務手続も進めます※3。
遺言に基づいて財産を引き継ぐには、裁判所による遺言の確認・承認が必要です。遺言も債務もなく、相続人全員の合意など所定の条件を満たす場合には、裁判所を通さず分ける方法もあります。どの方法を使えるかを、現地の専門家と確認しておきましょう※3。
このように、相続税の有無だけでは、家族が引き継ぐまでの負担はわかりません。税務、名義変更、外国人の所有条件を一緒に見ておくことが必要です。
各国の税務当局・裁判所・法令等の資料から作成。個人所有を念頭に置いた概要です。税額や手続は居住歴、家族関係、所有形態等で異なります。

