「70代、80代でも住める?」初めての冬を前に見えた課題
和子さんが気にしていたのは、冬の室温だけではありません。
移住先は冬になると氷点下まで冷え込む日があり、近隣住民からも「この辺りの冬は厳しいよ」と聞かされていました。夫婦は購入時に雨漏りや水回りを優先して改修したものの、窓や床下の断熱工事までは行っていませんでした。
古い木製建具が残る部屋もあり、隙間風を感じる場所があります。和子さんが工務店に相談すると、居間と寝室の内窓設置、床下の断熱補強などを提案されました。
概算費用は約180万円。工事範囲を広げれば、さらに費用が増える可能性もあるといいます。
「最初に450万円もかけて直したのに、また200万円近く必要なの?」
和子さんは、思わずそう口にしました。
国土交通省『令和5年住生活総合調査』では、住宅の個別要素に対する不満率は「断熱性」が41.1%、「エネルギー消費性能(光熱費の節約)」が39.7%でした。住宅の暖かさや光熱費は、多くの世帯が気にしている問題です。
さらに、環境省『令和5年度家庭部門のCO₂排出実態統計調査』によると、1971~1980年に建てられた住宅では、二重サッシや複層ガラスの窓が「ない」と答えた世帯が68.2%に上っています。築年数の古い住宅では、断熱性能の確認が重要になります。
和子さんは、冬場の暖房費も心配していました。以前のマンションでは、冬でも室内が比較的暖かく、エアコンだけで過ごせる日が多かったといいます。
一方、古民家は部屋数が多く、廊下や洗面所まで暖めようとすると、灯油代や電気代がかさむ可能性があります。
「今は元気だからいいけれど、70代、80代になっても、この家で暮らせるのかしら」
その言葉を聞き、正彦さんも考え込んでしまいました。
夫婦の年金は、正彦さんが65歳になるまで満額の受給が始まらず、現在は貯蓄を取り崩して生活しています。65歳以降の夫婦の年金見込額は月約22万円。生活費を抑えるつもりで移住したものの、家の維持費がどの程度になるかは、まだ見通せていません。
正彦さんは、改めて工務店に相談し、まずは居間と寝室の内窓設置を優先することにしました。洗面所や浴室の寒さについても確認し、必要な対策を段階的に進める予定です。
「家を買ったとき、目に見える傷みばかり気にしていました。住んでみないとわからないことも多いですね」
和子さんも、移住そのものを後悔しているわけではありません。
ただ、古民家の魅力を楽しむためには、住み続けるための費用も考えておく必要があると感じています。
「庭で野菜を育てたり、縁側でお茶を飲んだりする時間は好きなんです。でも、冬を安心して過ごせる家にしたいですね」
築年数の古い住宅を購入する際は、物件価格だけでなく、断熱性能や設備の状態、将来の修繕費まで確認しておくことが大切です。特に退職後の住み替えでは、収入が限られる時期にまとまった改修費が必要になる場合もあります。季節ごとの暮らしやすさも含めて検討することが、長く安心して住み続けるための備えになるでしょう。
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