「退職金で家が買える」夫婦が選んだ築50年の古民家
63歳の正彦さん(仮名)は、61歳の妻・和子さん(仮名)と2人暮らし。正彦さんは60歳で会社を定年退職し、その後は再雇用で働いていましたが、今年春に仕事を辞めました。
夫婦が移住先として選んだのは、地方都市の中心部から車で30分ほど離れた集落にある、築50年の木造一戸建てです。
以前から古い日本家屋に憧れていた正彦さんは、退職後に物件を探し始め、広い縁側と庭のある家を見つけました。
「夫婦2人なら、どこでも暮らせるだろう。せっかく仕事を辞めたんだから、好きな場所に住みたい」
和子さんも家庭菜園に興味があり、静かな環境には魅力を感じていました。
物件価格は650万円。土地付きの一戸建てとしては手頃で、正彦さんは購入を前向きに考えます。
ただし、古い家だけに、そのまま住める状態ではありませんでした。購入前に建築士による建物調査を依頼したところ、雨漏りの跡や床下の傷みが確認され、給排水設備も更新が必要とわかりました。
夫婦は工務店と相談し、屋根の部分補修、傷んだ床の修繕、水回りの更新などに約450万円をかけることにしました。
物件購入費と改修費で合計1,100万円。諸費用や引っ越し代を含めると、支出は約1,200万円です。
正彦さんが受け取った退職金は約1,800万円。移住前からの預貯金も約2,000万円ありました。
以前住んでいた賃貸マンションを退去したため、家賃の負担もなくなります。
「退職金で家を買っても、貯金は残る。これなら大丈夫だと思ったんです」
春に引っ越した夫婦は、庭に野菜を植え、休日には近くの直売所へ出かけるなど、新しい暮らしを楽しんでいました。
しかし夏の終わり頃から、和子さんは家の中の寒さが気になり始めます。朝晩になると、縁側の近くに冷たい空気が流れ込み、廊下の床もひんやりと感じられました。
「この家、冬になったら相当寒いんじゃない?」
正彦さんは「昔の家だから多少は仕方ないよ」と答えましたが、和子さんの不安は消えませんでした。
