眠る不動産の本質を掘り起こせるか
そんな中で、不動産再生・投資を手がけているプロフィッツ(東京都千代田区)は、約352兆円の市場に眠っている未流通のアセットに注目している。352兆円のうち、およそ1.8%しか年間の取引量はないという。
同社では、単に「売買されていない不動産」ではなく、用途や保有方法が適切でないため、本来の価値を発揮できていない不動産を未流通アセットと位置付ける。使い方が分からない、あるいは所有者自身が可能性に気付いていないことが、資産が動かない一因とみている。
ただし、足元では金利上昇による調達コストの増加、人材採用や企業価値向上への対応など、企業経営そのものを見直す必要性が高まっている中で、バランスシートに眠る不動産を「今後どう位置付けるのか」という議論が避けられなくなっている。
プロフィッツが手掛けたシェアオフィス「BLOCKS恵比寿」では、従来は士業などを主な利用者としていたオフィス空間を、フリーランサーやスタートアップなどの需要に合わせて設計をし直したもので、共用部分を拡充し、ラウンジやウェブ会議用ブースを導入した。
貸し出す単位も面積ではなく席の数へと変更した。これにより、リノベーション後の収入は倍増し、NOIも2.2倍になったという。
ペット共生型賃貸住宅「FLUFFY」では、専用設備や健康相談などのサービスも導入した。借り手は、「これから飼う人+ペット愛好家」で、全戸に脱臭・防滑・リードフックを設備として配備した。
入居前のペット面談によりトラブル発生率は再生前の5%から0.5%まで圧縮できている。IRR(内部収益率)の想定値は15~18%である。
横浜中華街では、旧飲食ビルを家族・グループ向けホテルへ用途転換した。横浜という街は、同じ場所に異なる2つの需要が併存している。中華街で飲食を楽しむ人と、観光客による宿泊需要である。ただ、飲食業界はコロナ禍以降、宴会・会食の時間が縮小しており、その需要が減った用途を宿泊事業に転換することで、その建物の収益性をアップさせる試みだ。
単なる改修ではなく、デザインやアート、食と茶、街との接点・回遊性を創出する体験型への投資により、大幅に収益増を描く。飲食店を継続したままの状態と比較して、売り上げ計画比は310%、NOIは200%の計画値とはじいている。
飲食店としての短時間利用から、宿泊を通じて地域の滞在価値を提供する施設へと再生することで収益性を追求する。
無形価値と結び付ける発想を投資に導入
不動産再生の競争力は、物件を安く取得する能力だけでは決まらなくなりつつある。市場調査によって需要を見極め、商品を企画し、運営事業者と連携する。さらに利用者の評価を取り込みながらサービスを改善する。取得から運営までを一体的に設計する能力が重要になる。
代表取締役の田中慎一郎氏は、「これまでの不動産開発が多くの人に受け入れられる平均的な商品を目指してきた。一方、デジタル技術やマーケティング手法の進化によって、特定の利用者が抱える課題に対応した商品も事業化しやすくなった」とみている。
こうした事業では、立地や築年数だけでは測れない価値が生まれる。ブランド、運営サービス、利用体験などの無形価値を収益に結び付ける発想が、従来の不動産投資との違いとなる。
ただ、再生事業を取り巻く事業環境としては課題が増えている。建築費の高騰は改修費用を押し上げ、金利上昇は投資収益を圧迫する可能性があるためだ。これらに負けない収益性を確保できるかが勝ち筋への道となる。
[参考資料]
不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )『日本の「使われていない不動産」はどれほどあるのか。特定の利用者が抱える課題に対応した商品で勝ち筋への道』

