今回は、中小企業の経営者の間に今なお残る「メインバンク」信仰について見ていきます。※本連載では、現場での実務経験豊富な経営コンサルタントである著者が、銀行交渉の成功事例、融資を受けるために知っておきたい銀行の内部事情などを紹介します。

今から20年前に起きた金融機関のリスク管理革命

中小企業の経営者とお話ししていると、
“それは今どき、死語でしょう!”
と、言いたくなることがあります。

 

“ウチのメインバンクは、○○銀行なんですよ。”
“えっ、そうなんですか!○○銀行がメインとは、スゴイですねぇ。”
“いやいや、なんとかようやく、そこまでたどりつきましたよ。”
などという会話に、私も聞き覚えがあります。

 

その時代を通過した経営者には、今なお、
言葉の中に「メインバンク」への信仰心が現れる、
という方がいるのです。
“「メインバンク」だから、なんとか助けてくれるはずです。”
“うちの「メインバンク」である○○銀行に、そんな交渉や扱いなどできない。”
“○○銀行が「メインバンク」なので、今もなんとか生き延びています。”
そんな、浪花節のようなセリフはもはや、死語の世界なのです。

 

それは、今のような、
融資先の格付け(スコアリング)がなかった時代、
の話しです。
かつて、そんな浪花節的融資の結果、バブル崩壊後に、
各銀行は、不良債権を大量に抱え、業績を悪化させていったのです。
その状況を打破すべく、日本銀行から各市中銀行に、
客観性評価により融資せよ、との指針が、1996年に
出されたのです。
金融機関での、リスク管理革命が起こったのです。
今から20年前のことです。

現在は返済能力重視の「格付け」がすべて

その指針を受けて誕生したのが、現在も使われている、
返済能力重視の格付け(スコアリング)です。
時代はその時点で、完全に変わったのです。
なのに、「メインバンク」信仰がどこかにあり、
死語が飛び交う、ということが起こるのです。

 

「メインバンク」信仰の経営者にとって、
その銀行は、ある種、教祖様のようなものです。
なので、銀行員や支店長も、
経営者の信仰心を見抜くと、教祖様として振る舞い始めます。
“「メインバンク」として、ぜひとも、協力させてもらいます!”
などと言います。
しかし実際は、格付け(スコアリング)がいいから、
というだけです。
さらに、
“この地域でも、最優遇の金利で対応させてもらいます!”
“そうですか!ありがとうございます!”
などと、ますます乗せられてしまいます。
で、その金利を聞いてみると、最優遇でもなんでもない、
銀行にとっての最優遇、だったりするのです。

 

今や、かつての「メインバンク」
などというものは、存在しないのです。
そう呼んでいたとしても、単に、
振込などを引き受けている窓口銀行であり、
借入金額が一番大きい調達銀行である、
というだけの話しなのです。

本連載は、株式会社アイ・シー・オーコンサルティングの代表取締役・古山喜章氏のブログ『ICO 経営道場』から抜粋・再編集したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。ブログはこちらから⇒http://icoconsul.cocolog-nifty.com/blog/

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