署名と登録はビデオ会議でOK、現地に出向く必要なし!
遺言の内容が固まったら、本人確認資料(UAE居住者はエミレーツID、非居住者はパスポート、どちらも保有していない場合にも代替方法あり)などを提出し、署名の予約を取ります。ビデオ会議には、本人と証人2人が参加します。公式FAQでは、証人は18歳以上で、遺言に受取人や後見人として記載された人と、その配偶者は務められないとされています。署名は電子的に行い、電子版の遺言が原本になります※1。
英語に不安がある方は、通訳の同席条件を予約前に確認しておくと安心です。公式サイトには、UAE司法省認可の通訳者の同席を認める案内がある一方、裁判所のFAQには、本人と証人の基本的な英語力が必要で、通訳者は受け入れないとの記載もありますが、一般的には通訳者の同席は許可される運用になっています。
2026年8月にDIFC裁判所が判決を出した事件では、父親の遺言が本当に本人の意思を反映していたのかが、息子同士の争いになりました。遺言は全財産を妻に遺し、妻が先に亡くなった場合には息子のうちの一人に遺すという内容でした。裁判所は遺言の無効などを求める請求を退けた一方、作成過程には問題があり、父親が直接法律の助言を受けるべきだったと指摘しました※4。
DIFCの登録窓口が確認するのは、登録に必要な要件を満たしているかどうかの形式的な部分です。DIFC裁判所であっても財産の分け方や日本の遺言との関係について個別のアドバイスを受けることはできません。したがって、遺言の有効性の担保のためにも、日本法と現地法に精通した弁護士からの助言は重要です※1。
登録時の費用と相続発生後の費用
Full Willの公表登録料(当局に支払う手数料)は、1人分が1万AED、2026年10月の為替レートで約43万円です。夫婦が各自の遺言を同時に登録する「ミラー遺言」は、2人分で1万5,000AED、約65万円です。これらの登録料にVAT(付加価値税)はかかりません※2、5。
DIFC Courtsの料金表に基づく。円表示は1AED=43円の参考換算で、現在の相場や支払額を示すものではありません。作成・翻訳・通訳・変更・相続発生後の費用等は別途確認。2026年10月21日確認。
登録料のほかに、弁護士による遺言作成や、必要に応じて日本語での説明・翻訳・通訳などの支援費用がかかります。相続が発生した後のプロベート申請料は、DIFC裁判所の案内では、遺産額にかかわらず1,500米ドル(今の為替レートで約24万円)です。その際の弁護士費用や名義変更などの実費は別途かかります※1、6。
登録後に結婚・離婚、受取人や執行者の死亡などがあった場合は、内容の見直しが必要になります。遺言の変更もビデオ会議で行えるため、家族の事情が変わったときにも日本から対応できます※1。
DIFC遺言なら、日本に暮らしながら、ドバイやアブダビの財産の引き継ぎ方を決めておけます。
※一般的な情報提供を目的とする記事です。具体的な取扱いは国籍、宗教、家族構成、居住地、所有形態等で異なります。遺言作成・相続・税務は、担当する専門家に個別にご確認ください。
※1 DIFC遺言の利用条件と登録手続
DIFC Courts Wills FAQ(利用資格、ビデオ会議登録、証人の要件、電子原本、英語に関する記載、プロベート申請料)
※2 Full Willの内容と後見指定
DIFC Courts Full Will(Single・Mirrorの登録料。後見指定はドバイまたはラス・アル・ハイマに住む子に限る)
※3 署名時の通訳に関する案内
DIFC Courts Wills Service(司法省認可の通訳者の同席に関する案内)
※4 公表裁判例
DIFC Courts Gupta v Gupta [2024] DIFC CFI 059(2026年8月19日一審判決)
※5 登録手数料
DIFC Courts Schedule of Fees(登録料と予約金の充当、VAT免除)
※6 相続発生後の手続
DIFC Courts Probate(申請とプロベートの付与、ドバイ裁判所での執行)
森 和孝
Eminence Luxe(ドバイ不動産仲介会社)Founder/CEO
One Asia Lawyers 国際弁護士(UAE法、シンガポール外国法、日本法)

