「せっかくならいいホテルに」退職後に変わったお金の使い方
「ホテルは最低でも5つ星。今さら安いところには泊まれないよ」
そう話していたのは、67歳の元会社員・修一さん(仮名)です。
修一さんは長年会社員として働き、65歳で退職しました。現在は妻の由美子さん(65歳・仮名)と、住宅ローンを完済したマンションで暮らしています。
退職時の金融資産は、退職金約2,500万円を含めて約8,000万円。夫婦の年金収入は、修一さんが月約23万円、由美子さんが月約8万円の合計31万円です。
「これだけ貯金があれば、老後にお金の心配をする必要はないと思っていました」
現役時代の修一さんは、仕事中心の生活を送っていました。旅行に行けるのは年に1、2回。宿泊先も、立地や価格を優先して選んでいたといいます。
転機は退職直後の夫婦旅行でした。
「長年働いたご褒美だから、今回は奮発しよう」
そう言って予約したのは、1泊10万円ほどの高級ホテル。広い客室に行き届いたサービス、朝食の充実ぶりに、修一さんはすっかり魅了されました。
「こんなに快適なら、これからの旅行は毎回ここまでこだわりたいと思ったんです」
それ以来、夫婦旅行では高級ホテルを選ぶのが当たり前になりました。
最初は年2回だった旅行も、時間に余裕ができたことで年6回に増加。交通費や食事代を含め、1回の旅行に40万〜50万円ほど使うようになったといいます。
変化は旅行だけにとどまりません。
以前は夫婦で5,000円程度だった外食も、今では1回2万円前後。衣類や日用品も、少しずつ高価格帯の商品を選ぶようになりました。
由美子さんも、当初は夫との旅行や外食を楽しんでいました。しかし、最近は修一さんのお金の使い方が気になるようになったといいます。
「旅行でいいホテルに泊まるのは構わないんです。でも、外食でも買い物でも、何でも高いほうを選ぶようになってしまって」
以前なら気軽に入っていた飲食店にも、修一さんは「せっかく外で食べるなら、もっといい店にしよう」と言うようになりました。
ある日、由美子さんが普段使いの靴を買おうとすると、修一さんは数万円する商品を勧めてきたそうです。
「そんなに高いものでなくていいわよ」
「でも、いいものを買ったほうが満足できるだろう」
「そうやって何でも高いものを選んでいたら、いくらお金があっても足りないわよ」
由美子さんの言葉に、修一さんは初めて自分の金銭感覚が変わっていることを意識したといいます。
