不動産投資家が今から取り組むべき防衛策
そこで個人投資家に必要なのは、保険料を単純に削減することではなく、災害発生時の損失を抑えながら、保険料を含む保有コストを適正化することになる。
特に重要となるのは次の対策だ。
① 保険契約の一斉点検
物件取得時に契約した保険を更新するだけでなく、補償内容と実際のリスクが合致しているか検証する。建物の再調達価額、設備の補償、漏水事故、施設賠償責任なども確認したい。
② 耐震・防水などの計画的な修繕
屋上防水、外壁、排水設備、受変電設備の浸水対策など、被害を軽減する修繕を優先する。すべての改修が保険料の割引につながるわけではないが、事故の発生確率や被害規模の低減には意味がある。
③ 借入金利と保険料を一体管理
保険料上昇だけを個別に検証するのではなく、借入金利の上昇、空室率悪化、修繕費増加が同時に起きた場合のストレステストを実施する。営業純収益だけでなく、元利返済後の現金収支と返済余力を確認することが重要だ。
④ 地震・水害リスクを取得価格に反映
利回りが高い物件でも、災害リスクや保険料負担が大きければ、必ずしも優良投資とはいえない。購入前には複数社の保険見積もりを取得し、中長期の保有費用を収支計画に組み込むべきだ。
⑤ 現金準備と事業継続計画の確保
保険ですべての損失を補えるわけではない。免責金額、保険金支払いまでの資金繰り、保険対象外の修繕費、空室期間などを見込んだ手元流動性の確保が求められる。
今後は、災害リスクが低く、適切に維持管理された物件ほど、長期保有における収益の安定性が評価されやすくなる可能性がある。保険料を経費として捉えるだけでなく、物件のリスクを測る指標の一つとなる。
「保険に入りやすい住宅」が資産価値を左右する
保険料の上昇がもたらすものは何か。一つの可能性は、災害リスクを含めた立地評価の見直し。これまで住宅の資産価値を左右する最大の要素は立地とされ、駅からの距離、生活利便性、都市機能の集積などが重視されてきた。
しかし、保険料や修繕費の地域差が拡大すれば、表面上は同じ市場価格の住宅でも、長期間保有した際の実質的な負担に違いが生じる。自然災害リスクが高い地域では、保険料の上昇だけでなく、加入条件の厳格化、自己負担額の増加などが進む可能性もある。
一方、耐震性や防災性能が高く、適切に管理されている住宅は、修繕リスクを抑えられるという点でも評価され得る。もっとも、現時点で保険料が住宅価格や中古マンションの成約価格にどの程度反映されているかを、一律に数値化するのもまた難しい。
それでも、住宅の評価軸が「取得価格」から「長期保有コスト」へ広がる方向は、住宅価格の上昇や住宅ローン金利の変化とも整合的であると言えそうだ。
住宅購入者は、保険料を含む総保有費用を見極めて、不動産投資家は保険料の上昇を織り込んだ事業収支を組み立てる必要がある。
つまり、保険料を安くすることだけを目的に、必要な補償を削減すれば、万一の際にかえって多額の損失を被りかねない。保険料を節約する時代から、災害リスクと保有コストを管理する時代へ。火災・地震保険料の動向は、住宅取得と不動産投資のあり方を変える重要な要素になりつつある。
[参考資料]
不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )『保険料高騰で変わる住宅の資産価値。災害列島で高まる保有コスト、火災・地震保険の値上げはどこまで続くのか』

