【相談者の事情】認知症が進む叔母の自宅と財産をどう守る?
家族関係:叔母、母、夫
「叔母の体調が悪くなり、認知症も進んでいます。今後の財産管理や自宅のことを、どうすればよいのでしょうか」
そう相談に来られたのは、40代のTさんご夫妻です。Tさんの叔母には子どもがおらず、現在の法定相続人はTさんの母親1人です。Tさんご夫妻は以前から叔母の財産管理を手伝っており、夫が主に会計面を担当しています。
すでに叔母との間で家族信託契約を結び、預貯金などを預かって管理していました。
しかし、最近になって叔母の体調が悪化。入退院を繰り返すようになり、認知症も進んでいました。さらに、叔母が長年暮らしてきた自宅の土地は借地で、20年ごとの借地契約の更新時期が迫っていました。
このまま借地契約を更新するべきか、それとも地主から土地を買い取るべきか。老朽化した建物の建替えも検討したいところですが、叔母は住み慣れた自宅への思い入れが強く、家を離れることに抵抗がありました。
加えて、叔母の財産は約1億4,000万円にのぼり、将来の相続税も大きな負担になることが予想されました。
Tさんご夫妻が考えていたのは、単に相続税を減らすことではありません。叔母が安心して暮らせる環境を守りながら、財産を適切に管理し、将来の相続にも備えたいという思いがありました。
そこで、借地権の整理、自宅の建替え、家族信託の活用を組み合わせた対策を検討することになりました。
【資産構成】推定相続財産は約1億4,000万円
叔母の主な財産は次のとおりです。
不動産
・自宅(土地は借地、約65坪、建物面積約226㎡)
・倉庫
・隣接地など
金融資産
・現預金:約1,299万円
・株式:約1,753万円
・生命保険:約1,258万円
推定相続財産
約1億4,000万円
【課題の整理】迫る借地契約の更新と約2,403万円の相続税
Tさんご夫妻から詳しく事情を伺ったところ、主に4つの課題が明らかになりました。
1.借地契約の更新時期が迫っている
叔母が暮らしてきた自宅は、土地を地主から借りて建物を所有する「借地権付き」の不動産です。
借地契約は20年ごとに更新することになっており、次の更新時期が間近に迫っていました。借地の場合、建替えや借地権の譲渡、担保設定などにあたって、契約内容によっては地主の承諾が必要になります。土地を所有している場合と比べると、利用や処分に制約があります。また、近年は周辺の路線価が大きく上昇しており、土地の価格も高くなっていました。
将来、さらに土地価格が上昇すれば、地主から土地を買い取る際の負担が増える可能性もあります。
そのため、借地契約の更新を迎える前に、地主との買い取り交渉を進めるべきか検討する必要がありました。
2.約2,403万円にのぼる相続税の負担
叔母には子どもがおらず、今回の試算では、法定相続人はTさんの母親1人です。
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
法定相続人が1人の場合、基礎控除額は3,600万円です。
叔母の推定相続財産は約1億4,000万円にのぼり、現状のまま相続が発生した場合、相続税は約2,403万円になると試算されました。
相続財産の多くを不動産が占めているため、相続税の納税資金をどのように確保するかも課題でした。
3.老朽化した建物の活用と建替え資金の確保
自宅の敷地内には、築年数の経過した倉庫があり、現在は賃貸していません。また、隣接する未使用の家屋もあり、これらを含めた不動産の有効活用が求められていました。ただし、建替えにはまとまった資金が必要です。地主から土地を買い取るのであれば、その購入費用も加わります。
Tさんご夫妻自身の資金負担をできるだけ抑えながら、どのように土地購入費や建築費を捻出するのか。
さらに、建替え後に賃貸住宅を設ける場合には、家賃収入で借入金を返済できるか、叔母の生活費を確保できるかといった点も検討する必要がありました。
4.認知症が進む叔母の意思をどう尊重するか
もう1つの大きな課題が、叔母の健康状態です。叔母は体重が大幅に減少するなど体調が悪化し、入退院を繰り返していました。認知症も進んでおり、判断能力に不安がある状態でした。
一方で、長年暮らしてきた自宅への愛着は非常に強く、家を離れることや施設への入所、建替えには抵抗がありました。たとえ経済的には建替えが合理的な選択であっても、叔母の気持ちを無視して進めるわけにはいきません。
本人の生活環境や意思を尊重しながら、将来の財産管理と相続対策を進める方法を考える必要がありました。
