「半額になるまで待つ」貯蓄4,500万円でも変わらない生活
「スーパーは夕方に行けば、お総菜が安くなるでしょう。洋服だって中古で十分ですよ」
そう話すのは、69歳の和子さん(仮名)です。
和子さんは65歳まで事務職として働き、現在は一人暮らし。夫とは死別し、独立した長女が車で40分ほどの場所に住んでいます。
公的年金は月約16万円。税金や社会保険料を差し引いた手取りは月14万円台で、毎月の生活費は約12万5,000円です。
住まいは住宅ローンを完済した分譲マンション。預貯金は約4,500万円あります。
「そんなに貯金があるなら、もっと好きなことに使えばいいのに」
長女の美咲さん(43歳・仮名)には、以前からそう言われていました。
しかし、和子さんの生活は会社員時代とほとんど変わりません。
食料品の買い物は値引きが始まる夕方が中心。日用品は特売日にまとめて購入し、洋服はリサイクルショップで探します。
冬物のコートも数年前に2,000円ほどで買った中古品を着続けていました。
「まだ着られるものを買い替える必要はないでしょう」
和子さんにとって、節約は特別な努力ではなく、長年の習慣でした。
結婚後も共働きでしたが、夫の収入は安定しない時期があり、住宅ローンや子どもの教育費を優先する生活が続きました。
「娘が大学に入ったころは、本当に余裕がなくて。給料日前には、冷蔵庫の中身を見ながら献立を考えていました」
夫が亡くなってからは、将来の生活を自分で支えなければならないという思いが一層強くなったそうです。
少しずつ積み立ててきた預貯金は、退職時点で約3,000万円。そこに退職金約1,500万円が加わり、現在の貯蓄額になりました。
そんな和子さんの暮らしに、美咲さんが疑問を抱く出来事がありました。
母娘で買い物に出かけた日のことです。雨上がりの歩道で、和子さんが足を滑らせかけたのです。
「お母さん、その靴、底がすり減ってない?」
美咲さんが見ると、和子さんの靴はかかとの部分がかなり摩耗していました。
「まだ履けるわよ。新しい靴って高いもの」
「でも、転んでけがをしたら大変でしょう」
美咲さんは靴を買い替えるよう勧めましたが、和子さんは「もう少し使える」と譲りません。その日の帰り道、美咲さんは思わず尋ねました。
「お母さん、何のためにそんなに貯めているの?」
