「登記ができる建物」を判断する3つの要件
建物が登記簿に記録されるためには、ただ形があればよいわけではありません。
不動産登記規則第111条では、
と定められています。
これをわかりやすく噛み砕くと、⼤きく次の3つの要件にわかれます。
1.外部分断性(がいぶぶんだんせい)
屋根や周壁があり、外気を遮断できる構造になっているかを指します。屋根があり、三⽅が壁で囲まれていれば満たすと判定されます。
2.定着性(ていちゃくせい)
基礎⼯事などによって⼟地に物理的に固定され、継続的に使⽤できる状態にあるかという点です。仮設⼩屋などのようにすぐ撤去できる構造のものは認められません。
3.⽤途性(ようとせい)
建造物が、本来の⽬的に沿って利⽤できる空間・状態になっているかどうかです。
⼀般住宅の新築⼯事では、通常、下記の順番で要件が揃っていきます。
最後の「⽤途性」が満たされた時点以降であれば、⼯事が完全に終わっていなくても適切なタイミングで表題登記の申請が可能です。
なお、これらの3要件がすべて満たされた以降の年⽉⽇が、登記上の「新築年⽉⽇」となります。現場の状況や検査済証の検査⽇などを考慮し、適切な⽇付で申請を⾏います。
登記のわかれ目となる「用途性」の判断基準
3要件のなかでも、工事の進捗状況によって判断が分かれやすいのが「用途性」です。用途性は建物の種類(⽤途)によって判断基準が異なります。
居宅(⼀般住宅)の場合
⼀般的に、「クロス(壁紙)が貼られていること」と「⽔回り設備があること」が⼤きな判断基準となります。クロスが貼られることで部屋の区画や床⾯積が確定し、⽔回り(キッチン・浴室・トイレなど)があることで⼈が⽣活できる状態(居宅)だと認められるからです。
事務所や⼯場の場合
事務所や⼯場であれば、壁紙がなく柱がむき出しの状態でも使⽤されるケースが多く、⼯場内にトイレが必須でない場合もあります。そのため、クロスや⽔回りがなくても全体として事業⽤途に使える状態であれば、⽤途性が認められます。
⼯事中の建物を⼟地家屋調査⼠が代理申請する場合、現地調査を⾏ったうえで「⼀部⼯事中ではあるものの、本来の⽤途(居宅など)として利⽤できる状態(⽤途性)を満たしている」旨を調査報告書に記載します。それに対して登記官が納得(⼼証を得る)できれば、未完成の部分があっても登記をすることができるのです。
トイレ未設置でも登記が通った!
Fさんの新築現場を確認したところ、進捗状況は下記のようになっていました。
クロス⼯事:すでに貼り終わっている
⽔回り(キッチン・洗⾯台‧浴室):問題なく設置完了
トイレ:便器本体は現場に搬入されているものの、床への据え付けが未設置
トイレが未設置だった理由は、トイレ室内の仕上げ⼯事(化粧⼯事など)が⼀部残っていたため、便宜上まだ設置していなかったためです。
現地では、製品⾃体は現地に搬⼊されており、いつでも設置して使⽤できる状態であることが確認できました。そこで調査報告書には「設置をしていない理由」と「いつでも設置することができ、居宅として⽣活・利⽤できる状態であること」を明記して申請を⾏ったところ、無事に建物表題登記が完了しました。
工事の遅れと融資期日の狭間で焦らないために
無事に表題登記が完了したことで、予定どおり融資の決済も⾏われ、Fさんは安⼼して新しいマイホームでの生活をスタートさせることができました。
⼯事途中の建物が「登記可能かどうかの判断」は、それぞれの建物構造や進捗状況、さらには管轄の法務局や担当登記官の判断にも左右される⾮常に繊細な問題です。素⼈⽬で判断するのは難しいため、専⾨家である⼟地家屋調査⼠への相談をお勧めします。
新築建物の表題登記は、書類や図⾯が揃っていることが多く⼀⾒シンプルに思われがちですが、今回のように「⼯事の進捗状況と融資実⾏⽇という締め切りとの戦い」になるケースが少なくありません。スケジュール感をもって進めていくことが重要です。
小川 曜
土地家屋調査士
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