自分の土地に「知らない建物の登記」が…
祖父の代から所有している土地の売却を検討していた50代のDさん。売却手続きにあたり不動産仲介業者が土地上の建物状況を確認したところ、「所有者不明の建物登記が土地上に残っている」と指摘されました。
登記記録(登記事項証明書)を確認すると、そこには「木造瓦葺平家建」の建物登記があり、登記名義人は昔土地を貸していた元借地人になっていました。
Dさんは「父の代に借地部分を分筆(※)して元借地人に売却完了しているはず。相続した自分の土地に自分以外の建物が存在するはずがない」と納得がいかない様子。元借地人が自分の土地に勝手に登記しているのではないかという疑念もあったようです。
※登記簿上にある1つの土地(1筆)を複数にわけて、それぞれ別の不動産として登記する手続きのこと
早速、問題となっている建物の登記記録を取り寄せ、相談内容の調査を開始しました。
調査で判明した原因:土地分筆時の「建物所在変更登記」の漏れ
登記記録を調べたところ、昭和30年代に新築された建物で、所有者は確かに元借地人でした。しかし昭和30年代の古い登記であるため、法務局に「建物図面・各階平面図」が備え付けられておらず、公的資料だけでは実際の建築位置が特定できない状態でした。
そこで土地側の登記記録を調べたところ、昭和40年代に分筆登記が行われ、元借地人へ売却されている事実が確認できました。
通常、土地を分筆すると新しく「地番」が附番されます。しかし、もともと建っていた建物の所在登記を変更しないままだと、建物は「分筆前の元地番(=現在はDさんが所有する土地)」に所在している扱いになり、登記上のズレが生じてしまいます。
今回の事態も、「建物が存在する土地の地番が変わったにもかかわらず、建物の所在変更登記が行われなかったこと」が原因であると仮説を立てました。
この問題を解消するためには、以下の対応が必要です。
1.元地番から分筆されたすべての土地範囲で現地調査を実施する
2.建物が実在する場合:適切な地番へ「建物所在変更登記」を行う
3.建物がすでに取り壊されている場合:「建物滅失登記」を行う
Dさんから正式に依頼を受け、現地調査へ着手することに。対象エリアは分筆により10筆ほどに細分化されており、街区全体を調査する大規模な作業となりました。
調査の結果、元借地人が買い取った土地上に古い木造瓦葺平家建を発見。やはり、分筆後の「建物所在変更登記」が漏れていたことが判明しました。
隣地の建物登記が自分の土地に残ってしまう理由
広大な一筆の土地に建物を建てて登記した場合、当時の地番で建物所在が登録されます。その後、借地部分を分筆して新しい地番が割り振られた場合、自動的に建物の所在登記が変更されるわけではありません。
本来であれば、土地分筆と同時に「建物の所在変更登記」を申請する必要がありました。しかし現実には、分筆時に建物の変更登記まで行う人は決して多くありません。 そのため、実態と登記上の所在が一致していないケースは全国的に見ても珍しくないのが現状です。
