美術品は「空調倉庫」で保管する必要がある
美術品保管において大切なのは、預かった商品を劣化させず、最良のコンディションに保ち、その高い価値を維持することにほかなりません。そのため、
①温度・湿度管理
②防塵、遮光対策
③耐震、消火設備
④セキュリティ対策
を徹底することが重要なのです。武蔵通商株式会社の代表取締役、澤田氏にお話を伺いました。
「美術品の価値を保つためには、常温倉庫ではなく最低でも空調倉庫で保管する必要があります。そのため弊社の倉庫では、絵画や掛け軸の保管に適した摂氏20度を維持できるようになっています。
一方、湿度は設置された湿度計で50%前後を保つように厳重管理されます。商品は基本的に密閉状態で保管されていますが、長期保管の場合、密閉状態のままでは作品が傷んでしまうので、材質や形状、作品に合わせ開封した状態で保管する場合があります。また、長期間保管すると、空調が管理された倉庫でも、湿気が高くなりやすいため、必要があれば『陰干し(室内乾燥)』を行ないます。
次に、塵や直射日光、紫外線は、変形や変色の原因になることがあるため、この2つもシャットダウンできるように設計されています」
また、災害が多い日本での美術品保管においては、地震および火災への対策も欠かせません。
「建物の耐震・防火構造はもちろんのこと、万が一の場合、水ではなくハロンガスによる消火を行うため、作品が水浸しになることはありません。セキュリティ面では、監視カメラによる24時間警備体制をとっていて、倉庫への入退館のチェックも万全です」
武蔵通商の倉庫内部は、①美術品保管、②美術品作業、③陰乾し、④ピロティの4つのエリアに分かれており、一定区画のパーティションで仕切られているため、商品の衝突による破損や、他の商品との混在は起こり得ないと、澤田氏は語っています。
「保管業務に携わる作業員は、前後左右の動線をゆとりを持って作業を行っています。作品同士が近すぎることにより、作品を取り出す際、別の作品に触れて破損させるといったリスクを限りなく減らすためです。また、作品はすべて入庫台帳で保管状況を管理しているため、取り違えや紛失のリスクも最小限に抑えています」
転倒時に傷つけないため、移動の際には必ず2名以上で作業を行うなど、保管されている作品に対し、徹底して配慮を行っている武蔵通商。美術品の保管において、どんな点を意識しているのでしょうか。
「保管時にも、梱包作業と同様に、作品に対しての配慮や心遣い、思いやりが必要不可欠です。サービスに終わりはありません。新型コロナウイルスの感染拡大により、産業社会構造が激しく変化し、物流にも多様なソリューションが要求されているいま、これまで以上に安心して依頼していただけるよう、常に『お客様の立場になって考えること』、『サービスの品質向上』に努めています。
半世紀にわたって培ってきたお客様の信頼、実績をベースに、絶えざるチャレンジを続けていきます」
新たな「美術品保管専用倉庫」が9月に完成予定
これまでは、本社機能と梱包工場、美術品を保管する倉庫が近距離とはいえ分散していた武蔵通商ですが、現在、他社との差別化を図るため、保管料が高くなってしまう都内を避け、集荷から梱包、輸送、保管までワンストップでできる新社屋の建設を行っています。
「2021年9月の竣工をめざして、武蔵村山市内に本社ビル新築工事を進めています。鉄骨造6階建て、延べ床面積3100平方メートル。お客様に総合物流ソリューションを提案、提示していくための新拠点です(HPはこちら)。
本社機能を有することはもとより、特徴的なのは『美術品保管専用倉庫』でもあるということ。新社屋は、東京都多摩地区で最大級のハイスペックな施設になることが予定されています。美術品保全に必要な設備面のスペックはもちろん、武蔵通商が誇る梱包、輸送、移設、貿易手続きの各種サービスをワンストップで実現できる、他では類をみない付加価値の高い『美術品保管専用倉庫』です。
絵画やアート作品、彫刻やオブジェ、掛け軸、陶磁器など、お客様にとってはかけがえのない作品を最高のコンディションで保つのに最適なスペースといえるでしょう」
次回(最終回)は、依頼から梱包・輸送・保管までワンストップで実現できる武蔵通商のサービスについて、事例をもとに紹介します。