国税庁が検討する「残余利益方式」とは?
今回の見直しで大きな焦点となっているのが「残余利益方式」である。
国税庁の有識者会議第6回会議の資料では、現行のように会社の規模によって評価方式を分けるのではなく、理論的な根拠を持つ残余利益モデルをベースに、税務上の評価としての安全性、統一性、簡便性などを考慮して一定の修正を加えた方式への見直しが示されている。
残余利益方式は、簡単にいえば、会社の純資産だけではなく、そこから通常期待される収益を上回って企業が生み出す「残余利益」に着目して株式価値を算定する考え方である。
第6回資料では、将来の利益を無限期間にわたって予測することは現実的ではないことから、加算期間を5年程度とする案が示されている。
課税時期前5年間の法人の「正常利益」を基に将来の利益を予測し、株主が通常期待する収益率を上回る部分を残余利益として算出。その残余利益を現在価値に割り引いて、株式の評価額に加える考え方である。
一方、6年目以降の残余利益を示す「ターミナルバリュー」については、算定が困難であることや、残余利益は年数とともに減少してゼロに近づくと考えられることなどから、加算しない案が示されている。
大会社では評価額「2倍超」の試算も
では、実際に新しい方式に変えると、評価額はどの程度変わるのか。第6回会議の資料には、かなり具体的な試算が示されている。
国税庁は、令和2年分から5年分の相続税・贈与税の申告のうち、取引相場のない株式を取得した申告から無作為に抽出し、類似業種比準価額と純資産価額の双方を算出している1,378社について、残余利益方式による評価額を試算した。
加算期間5年、還元率8%とした場合、現行の申告評価額を100とした評価額の中央値は、会社規模によって大きく異なる。
大会社:斟酌(しんしゃく)率1.0の場合は現行比で50.3%増、0.9では71.7%増、0.8では93.2%増、0.7では114.7%増(条件によって現行の2倍を超える水準)。
中会社:斟酌率1.0の場合は現行比で1.9%減、0.9では12.1%増、0.8では26.1%増、0.7では40.2%増。
小会社:斟酌率1.0で21.8%減、0.9で12.0%減、0.8で1.9%減、0.7で10.1%増。
このように、会社規模によって影響が大きく異なることが分かる。もっとも、この試算はあくまで一定の条件を置いたシミュレーションであり、新たな評価方式が決定したことを意味するものではない。
