「評価額が下がる会社」も少なくない
今回の試算で見逃せないのは、評価額が上昇する会社ばかりではないという点である。
国税庁の第6回資料では、同じく加算期間5年、還元率8%とした場合、現行の申告評価額以下となる会社の割合も示されている。
全体では、斟酌率1.0の場合で57.3%、0.9で48.6%、0.8で40.2%、0.7で33.1%が現行評価額以下となった。会社規模別では、小会社は斟酌率0.8で58.6%、0.7で50.7%が現行評価額以下となる一方、大会社では同じ条件で21.1%、16.4%にとどまる。
つまり、新方式によって一律に「非上場株式の評価額が上がる」というわけではない。ただし、資産規模が大きく収益性の高い会社ほど評価額が上昇しやすい傾向が試算から読み取れるため、事業承継を考える経営者にとっては無視できない問題となる。
オペレーティングリースや役員報酬も論点に
第6回会議では、残余利益方式そのものだけでなく、評価額を算定する際の「利益」をどのように捉えるかについても具体的な検討が行われた。
その一つが、オペレーティングリースである。
残余利益方式では過去の利益実績を基に将来利益を予測するため、過去の利益に非経常的な損益が含まれていれば、会社の「正常利益」を算定する際に補正する必要がある。国税庁の第6回資料では、オペレーティングリースについて、リース取引がなかったものとして利益や純資産を修正して評価する案が示されている。
オペレーティングリースについて「契約期間全体でみれば売却益と減価償却費が相殺される一方、相続税では評価時点という一時点で企業価値を評価するため、取引の有無によって税負担に大きな差が生じる可能性がある」と説明している。
さらに、親族役員への過大な役員報酬や、株式評価の直前期に支払う多額の役員退職慰労金についても、利益を圧縮する手段となる可能性があるとして、正常利益の計算上、一定の修正を加える案が示されている。
今回の見直しは単純に「評価方式を変更する」というだけではない。新方式を導入した場合に、企業側が利益や資産をどのように計上しているかについても細かなルールを設ける必要がある。
