前回は、ホーチミン市における不動産の開発プロジェクトについて、日系企業が関わっている案件も含めてご紹介しました。今回は、2017年のベトナム経済と不動産市場の見通しについてお伝えいたします。

根強い「一軒家志向」にも変化の兆し

ベトナム政府は、2017年の実質GDP成長率を6.7%とし、消費者物価指数(CPI)の上昇率を4.0%以下に抑える政府目標を発表した。2016年のGDP成長率は6.1%(2016年10月集計時点)であり、そこから0.6%の上乗せを目指すことになる。この目標に対して、達成に楽観的な見方がある一方で、2016年後半からの消費鈍化や、TPP成立が困難になったこと等もあって、今年の経済成長は前年同様か、むしろ少し下げるのではという見方もある。

 

振り返ると、2016年は不動産販売、自動車販売が好調な年だった。特に自動車は新車販売台数が前年比24.2%増の30万4427台となり、初めて30万台を突破。その背景には、税優遇処置や銀行ローンが組みやすくなった事などがあった。そのため、ミドル層若者の購入が大幅に増え、国内生産車の販売台数の増加が目立った。ただ2017年については、ASEAN域内の完成車輸入関税の撤廃が予定されていることもあって、買い控えが起きることが予想されている。

 

不動産については、2014年後半から急激に伸びてきたのが、ここにきて一服感が出てきている。そのため、ハイクラスのコンドミニアムについて言えば、2017年度の販売予定戸数は減少している。一方で、ロークラスのコンドミニアムの販売計画戸数は増加しており、自らの居住用として物件を希望するミドル層をターゲットにした市場も拡大しつつある。またホーチミン市周辺では、ロークラスのコンドミニアム販売が多数計画されている。

 

ホーチミンでコンドミニアムを購入するベトナム人は、投機目的で購入するのはハノイからが多く、彼らは複数のユニットを購入している。一方で、ホーチミン在住のベトナム人の場合は、投機目的でなく住居目的として物件を購入する人が多い。特に30代の夫婦などの若い世代が、銀行ローンを利用して購入するケースが多く見られ、伝統的な一軒家志向にも変化が見え始めている。

2016年に過去最多を更新した日本からの直接投資件数

海外からの投資に関しては、一時期ほどの勢いは落ち着いたものの、依然として増加している。日本人については、日本国内からの投資に加えて、海外在住の日本人による購入も増えており、今後も緩やかに増加傾向が続く見込みである。2016年末から日本人を含む外国人購入者への物件の引渡しが始まっている。それらの物件が、実際に収益を生み出し、適切な税務処理を経て、最終的に海外に利益を送金できることが実証されれば、今はまだ躊躇している外国人投資家も、安心してベトナム不動産への投資を始められるようになるだろう。

 

2016年の海外からの直接投資は、新規・拡張を合わせて約205億ドルで、前年同時期に比べ9.5%減少したものの、投資件数自体は過去最多の3708件(前年比31.2%増)となった。日本からの投資額は2年ぶりに20億ドルを超え、件数も過去最多の549件を記録した。

 

2017年は、先にも述べたような内需の一服感とTPP座礁などの外部要因もあって、不透明な状況が続く見込みである。ベトナムでは、翌年の景気を占うものとして、旧正月(テトー)前の消費動向が注目される。今年のテトーは、前年に比べて売り上げが低迷し、2017年は我慢の年になるとの見方が一般にも広がっている。

 

ただし今後の経済状況について、決して悲観的になる必要はないだろう。むしろ、これまでの2年間が、近年では飛びぬけて好調だったのであり、今年はその反動を迎えているだけなのだとも言える。ここで一息をいれれば、来年からはまた上昇に向かうことが期待される。特に2020年の地下鉄METROの開業に向けて、不動産市場はさらなる活性化が見込まれている。

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