国際紛争などの報道で、近年「地政学」という言葉を目にする機会が増えています。国の位置や地形などが政治や経済に影響を与えるという考え方ですが、国際関係を読み解く視点は地理だけではありません。実は、各国で使われている「言語」に注目すると、国境を越えた人や資金の移動、さらには税制の違いまで見えてきます。今回は、公用語の広がりを手がかりに、言語と国、そして税制の意外な関係について矢内一好氏が解説します。
ドイツ語圏では国境の意識が薄くなる?
公用語人口ランキングで12位のドイツ語は、ドイツに隣接するオーストリア、スイス、ベルギー、リヒテンシュタインでも公用語となっています。
欧州では、国境での検査を原則として省略するシェンゲン協定があることから、ドイツ在住者は、同じ言語圏にあるリヒテンシュタインへ自由に入国し、銀行に預金することができます。
要するに、言語だけに注目すれば、国境を越えた際にも「隣国」という意識が薄くなるのです。しかし、国が異なれば税法も異なります。
言語圏を越えて移動する「お金」と税制
各国を自由に行き来でき、同じ言語圏に属しているのであれば、税負担の軽い国に預金することは当然ともいえます。
このような状況を改善するため、EUでは、他の加盟国の居住者が保有する預金情報を、その居住者の本国に通知する協定が締結されていたことがあります。
この事例からも、言語や国境を越えた人の移動だけでなく、資金の移動にも、国ごとの制度の違いが関係していることが分かります。
国際課税研究所首席研究員 博士(会計学)。
中央大学大学院商学研究科修士課程修了。昭和50年東京国税局に勤務、平成2年退職。産能短期大学助教授、日本大学商学部助教授、教授を経て平成14年中央大学商学部教授(平成30年退職)。税務大学校講師、専修大学商学研究科非常勤講師、慶應義塾大学法学研究科非常勤講師、新潟産業大学経済学部非常勤講師、武蔵大学経済学部非常勤講師を歴任。
著書に『国際課税と租税条約』(ぎょうせい、第1回租税資料館賞受賞)、『租税条約の論点』(中央経済社、第26回日本公認会計士協会学術賞)、『移転価格税制の理論』(中央経済社) 、『詳解日米租税条約』(中央経済社)など。
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