つらさを和らげるために大切な「3つのリハビリ」とは?
在宅医療に携わって10年余りが経った今、義母の看取りを振り返ると、いくつか考えさせられることがあります。
①がんの痛みを軽減する「緩和的放射線治療」
義母は脊椎への骨転移による強い痛みがありましたが、放射線治療によってかなり軽減しました。現在では、治癒を目指すのではなく、痛みなどの症状を和らげるために行う「緩和的放射線治療」が広がっています。
特に骨転移による痛みでは、外来で数回照射するだけでも大きな効果が得られることがあります。にもかかわらず、今でも医師の側に十分認識されず、適切なタイミングで放射線治療につながっていない患者さんは少なくないように思います。
がんの痛みというと医療用オピオイドなどの薬物治療をまず考えますが、痛みの原因によっては放射線治療を組み合わせることで、苦痛を大きく減らすことができます。緩和ケアは薬だけで行うものではありません。
②楽に過ごすための「緩和リハビリ」
もう1つ強く思うのが「緩和リハビリ」の大切さです。
リハビリテーションというと、失われた機能を回復させ、筋力をつけ、再び歩けるようにすることを思い浮かべます。しかし人生の最終段階では、目的そのものが少し変わります。
「体のだるさを軽くしたい」
「関節のこわばりを減らしたい」
「楽な姿勢で眠りたい」
「家族と一緒に食卓を囲みたい」
そうした小さな希望をかなえることも、立派なリハビリです。
今振り返ると、義母の「足がだるい。マッサージして」という言葉は、まさに緩和リハビリを求めていたのだと思います。
当時の私は、「できることはできるだけ続けたほうがよい」「ADLはなるべく落とさないほうがよい」と考えていました。しかし今なら、もう少し違った声かけ、つまり、人生の最終段階にある患者さんにとって大切なのは、「何ができるか」だけではなく、「どのように過ごしたいか」ということを意識した声かけができるのではないかと思います。
体のだるさやこわばりは、薬だけでは十分に取れないことがあります。筋肉をやさしく揉み、関節をゆっくり動かし、ストレッチをするだけで、表情が和らぐ患者さんもいます。
私のクリニックにも理学療法士が在籍し、緩和リハビリに関わっています。しかし、その力を十分に生かすには、医師や看護師も緩和リハビリの考え方を理解し、必要な患者さんにつなげる必要があります。
これからの在宅医療では、「治すためのリハビリ」だけでなく、「楽に過ごすためのリハビリ」という視点を、もっと広げていくべきだと考えています。
③口内の乾燥・喉の痛みを和らげる「緩和口腔ケア」
終末期の患者さんがよく経験するつらい症状の一つが、口の中の乾燥と、それに伴う喉の痛みです。
終末期になると、口を閉じる筋力も衰え、顎が下がって口を開けたまま呼吸することがあります。すると口腔内は急速に乾燥します。
そのため、保湿ジェルなどを使って潤いを保ち、必要に応じて咽頭にこびりついた分泌物や痰を丁寧に取り除きます。さらに、舌や顔面の筋肉をやさしくマッサージすることで、口の動きや嚥下機能、味覚の維持・改善を目指します。
以前、この連載でも「黒岩メソッド」について取り上げました。患者さんの状態に合わせてその一部を取り入れるだけでも、苦痛が大きく和らぎ、ときには再び少量の食事がとれるようになることさえあります。
「もう食べられないのだから、口腔ケアをしても仕方がない」と思われることがあります。しかし私はむしろ逆だと思っています。食べる量が減り、口を開けて過ごす時間が増えるからこそ、乾燥や不快感は強くなります。
人生の最終段階にあっても、口の中が潤い、さっぱりしていることは、とても大切です。
